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第10回(最終回) タイ製造拠点の目指すべき方向性 ~タイ製造拠点の存在価値を高めるには~

2021年12月 9日

 本コラムでは、製造拠点のアジア展開についてタイを事例として取り上げています。アジア製造拠点の実態や今後の方向性について筆者がタイ製造拠点を支援した経験から、拠点運営を成功させるための課題や処方箋を解説していきます。第10回(最終回)となる今回は、タイの製造拠点が今後目指すべき方向性として、「タイ製造拠点の存在価値を高めること」のポイントについて説明します。

タイ製造拠点の存在価値とは

 タイ製造拠点は日本国内の代替製造拠点からアジアを中心とした製品供給の要所になってきています。また、製品供給を通じて雇用を創出しタイ国の発展にも貢献しています。改めて考えてみると、日本企業の利益創出のためだけではなく、タイ国やASEANを中心とするグローバルの発展に貢献することこそがタイ製造拠点が存在する価値だと感じます。

 タイ製造拠点には、日本国内の本社や工場に不足することを広範囲かつ高いレベルで補う役割を担いつつ、自立して独自に成長していくことが求められています。成長のベースには利益を創出し続けられる体質が必要で、これをいかにして保有するかがカギとなります。しかし、この体質は短期間でつくられるものではありません。

 これまでに述べてきたとおり、日々の確実な取り組み(日常管理)と将来のあるべき姿を描いてそこに向かう活動(目標管理)の両輪を回して推進することで実現できます。この体質を構築できていない企業は成長のための足元の課題として認識し、早期にその解決に取り組むべきです。

製造拠点改革の障害を打破して足元課題を解決

 足元の課題解決とはいえ、タイ製造拠点の改革にはある一定の難しさがあることが予想されます。筆者の経験からその障害は3つあると考えています(下図)。

タイ製造拠点改革の3つの障害

 これらの障害で改革が進んでいない(進められない)企業が存在していることも事実です。とくにやっかいなのが「本社の呪縛」です。問題の多い製造拠点に対しては、どうしても日本からの手厚いサポートが必要になります。課題解決が進んでもこのサポートが続いているようであれば、いつまでもタイ製造拠点の意思決定が進まず、指示されたままの動きしかできなくなってしまうのです。ある一定期間は有益なサポートだったとしても、時間の経過とともに改革の障害になる皮肉な結果を生んでしまうわけです。自立運営できる製造拠点を実現すには、改革への意欲やスキルを高めて障害を打破しなければなりません。

存在価値を高める3つの方向性

 タイ製造拠点の存在価値を高める方向性をどのように考えるかは難しい問題です。事業環境や事業特性の違い、自社を取り巻く状況などで、さまざまな存在価値の高め方が考えられるからです。ここではラフスケッチとして存在価値を高めるための方向性を下図に整理してみました。

タイ製造拠点の存在価値を高める方向性


 製品供給から存在価値をより高める方向性として、バリューチェーンにおける機能発揮度を高めるよう開発、設計をタイ製造拠点に保有する、あるいはその範囲を拡大することが考えられます。たとえば、すでに開発機能をタイ製造拠点に保有しているとしても、一部の機能に留まっていることがあるため、さらに広範囲に機能を拡大していくなどです。

 また、サプライチェーンの強化に貢献するには、調達力・物流力が重要であり、タイ製造拠点にグローバルな調達・物流機能を保有することで、ASEANや日本にまで貢献していくことも考えられます。
 他の拠点への貢献という観点からは、圧倒的な量産の技術力を持ちつつ、グローバルに技術指導・提供を行うアジア地域のマザー拠点となる道もあります。

 この他にもまったく新しい事業領域を生み出し、独自の成長路線を歩む道もありえます。さまざまな方向性が考えられますが、どの道筋も短期で実現できるものではありません。大切なのは、自らの拠点の進む方向性を定め、実現のための道筋を描き、早期にスタートすることです。

存在価値を高めるための処方箋

 タイ製造拠点は自社や顧客への価値提供だけに留まらず、"なくてはならない拠点""選ばれ続ける拠点"としての存在価値を高めることが求められます。そのために、さまざまな障害を乗り越え目指すべき拠点像を描き、中長期にわたる腰を据えた取り組みが必須です。腰を据えて改革に取り組むには、リソースを中長期で確保し、そのリソースを最大活用し続けることが求められます。

 タイ製造拠点でも日本国内同様、歩みを止めることは許されません。走り続けなければならないのです。走り続ける拠点こそが環境変化に適応し、高い競争力を有した存在価値の高い拠点になれるのです。

 第10回(最終回)はタイ製造拠点が向かうべき方向性を考えてみました。近い将来、「日本や欧米に学べ」ではなく「タイから学べ」となるような製造拠点がでてくることを期待して本連載を終了したいと思います。

 タイの製造拠点改革は現在進行形、かつ重要性が増している取り組みである。本連載がこの取り組みに関わる人に少しでも有益な情報が提供できていれば幸いです。

生産・ものづくりコンサルティング

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コンサルタントプロフィール

角田 賢司

角田 賢司

プロセス・デザイン革新センター センター長 シニア・コンサルタント

1998年 JMAC入社。IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。これまでに自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品など、多くの業種で収益向上の支援を実施してきている。支援テーマは製造部門も対象とした現場の生産性向上、品質向上をはじめとし、調達コストダウンや在庫削減など多岐にわたり、かつ複数のテーマを同時に展開、実行マネジメントの支援を行っている。現在は日本製造業のグローバル化に伴い、日本国内のみならず、日系企業のタイ製造拠点の支援として、生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を現地で実践している。海外製造拠点の支援に際しても単なる個人の指導ではなく、JMACのグローバルネットワークを活用(日本人と現地コンサルタントが連携)した組織的な支援を展開している。
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