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第9回 リモートワークで組織変革を! 出勤しないからこそできる「しなやか」なチームづくり

2020年3月 4日

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 新型コロナウイルスが社会、経済に大きな影響を及ぼしている今、仕事の仕方や日常生活のあり方を考え、変えていくことが目の前の課題として突きつけられています。たとえば、仕事をするときに人と人が同じ場所にいながら情報を伝え合う、意見を交わし合うというのは、従来はごく「フツー」のやり方でしたが、働き方改革が叫ばれるようになると、わざわざ会って話すことは非効率ととらえる風潮も強まってきました。こうした中、日本では東京オリンピック開催期間の通勤混雑を想定して、仕事の効率を重視した「会わなくてもよい仕事の進め方」がさらに推奨されるようになってきました。
 テレワーク、在宅勤務、ノマドワークなど場所を選ばないやり方がスマートなワークスタイルと認識され、多くの企業でその準備が進められていました。もし、何の準備もないままだったら、今回のウイルス対応ではもっと大きな混乱が起きていたかもしれません。
 今回のコラムは、組織を変革していくだけではなく、大きな環境変化に対応するためのしなやかな物事の進め方として、多くの人が違う空間でつながり合う、リモートワークをより良い状態にしていく「リモートワークマネジメント」について、皆さんと考えていきたいと思います。

リモートワークマネジメントは環境変化に対応するための基盤となる行動様式

 私たちコンサルタントは社会・組織の課題解決を支援するために、さまざまな場所に移動して業務を行うという特性から、世の中に先駆けてリモートワークを実践してきたと私は考えます。すべてがうまくいっているかというと、正直そこまで言い切れないのが実情ですが、試行錯誤を重ねてきている経験から、遠隔地で互いにつながり合い良好な関係をつくり、ものごとを促進していくリモートワークマネジメントを実践していくポイントを参考までに投げかけたいと思います。
 私の経験から、リモートワークマネジメントが実践できるチームは、ものごとを進めるまず一歩を踏み出すことができるチームだと感じています。硬直しない、とどまらないということもチームのしなやかさなのではないでしょうか? しなやかさとは、環境変化に対応していくことでもあるとすれば、リモートワークマネジメントは組織、チームのしなやかさを高めるための有用な考え方、スキル、行動様式であると思います。リモートワークマネジメントは、しなやかな仕事のマネジメントであり、これが「しなやかな」チームをつくることにつながるといえます。

リモートワークマネジメントのなかでバーチャルミーティングを活性化する

 リモートワークを実践するためのメールやチャットなどのツールのほかに、メンバーがバーチャル空間に集まるWebミーティング、いわば「バーチャルミーティング」が貴重なつながりの機会・場となります。
 私が多く経験している組織活性化コンサルティングの場面で、「TV会議、Web会議などで連絡事項の共有はできた感じがするが、意見交換、対話・議論ができている感じがしない」などの相談を受けます。どのように進めたら意見交換、対話・議論ができるようになるのか、悩んでいる方も少なくないようです。
 そこで、バーチャルミーティングを実践するうえでのポイントを以下に整理しましたので、対話・議論を進めるための参考にしてみてください。


バーチャルミーティング実践のための3つのポイント

ポイント1
<ミーティングの事前準備>バーチャルミーティングの実施体制を整える。

《推奨:バーチャルミーティングの促進役は2人以上で実施すること》

 バーチャルミーティングはリアル(対面)でのミーティングと違い、つながりをつくる通信環境の安定が必須になります。チームでのバーチャルミーティングを行う際に、よく起こるのが「ネットワークにつながらない」トラブルです。安定した通信サービスやシステムを活用していても、さまざまなメンバーがさまざまな環境からアクセスするため、通信上のトラブルが生じることがあります。
 バーチャルミーティングの促進役(ファシリテーター)が1人だけだと、トラブルが起きるとその対応にかかりきになって、他のメンバーの貴重な時間もムダになります(この手の通信トラブルに対応するだけで、10~15分はすぐに費やしてしまいます)。
 時間をムダにしないためにも「ファシリテーターは2人以上」にするとよいでしょう。トラブルが起きても1人がトラブル対応している間に、もう1人がミーティングを促進することができるからです。こうして貴重な時間をムダにしない体制にしておくのです。

ポイント2
<ミーティングの最中>バーチャルミーティングは参加者の状態・気持ちにより一層意識を向ける

《推奨:ミーティングへの参加時点、途中、終盤に、参加者の気持ち、感情、感想などをこまめに聴く》

 バーチャルミーティングではリアルミーティングと違って、参加者が実際にいる環境・状況がそれぞれ異なります。ミーティングに集中してもらうための準備が必要になります。促進役はリアルミーティングのときよりもミーティングへのチェックインを丁寧に実施することをお薦めします。いきなり本題に入らず、参加メンバーに少なくとも一言ずつ言葉を発してもらい、互いに状況・状態を共有しましょう。
 また、バーチャルでは、ミーティングが進んでいくとリアル(対面)の場合と違って、メンバー自身が気づかないうちにミーティングの場から離れている、孤立している、他のことに集中している、などが起こりやすくなります。
 参加者には決して悪意があるわけではないのですが、物理的に距離が遠い分、意識は個人個人に向いてしまいます。そこで、動画や資料など同じものを見る、共通のテーマに集中して議論できる時間をつくるなど、工夫することをお勧めします。その後にこまめに「見てみてどう思った?」「どんな感想を持った?」「なにか浮かんできた?」「伝えたいと思ったことはある?」など、気持ちや感情などに対しても投げかけることで、距離感を保つことも大事です。
 加えて、私が個人的にバーチャルミーティングに効果的だと思っているのは、小グループでの対話・議論です。私はリアル(対面)ミーティングでも小グループでの対話をときどき実践しています。たとえば、10人の参加メンバーがいたら、今話し合っているテーマについて3人程度で小グループをつくって対話・議論し、その結果を全体で共有するなどです。同様に、バーチャルミーティングでも、こまめに発言する機会、気持ちや感情を表現できる機会を設けることで集中の維持、意見の引き出し、内容の共有と活用もできると思います。Webミーティングには小グループをつくれる機能もあるので、実践してみてください。
 ミーティングでは参加したメンバー自身がバーチャルミーティングを通じてどのようなことを認識・理解したのか、対話・議論のまとめ(ラップアップ)も大切です。ただし、それだけではなく、感じたこと、気づいたこと、思ったことなどの感情面のふりかえり(チェックアウト)も促すことでミーティングの内容を印象づけることも必要です。こうすることで、ミーティング後の具体的なアクションにつながる可能性を高めることができます。ぜひ工夫してみください。

ポイント3
<ミーティングの終了後>バーチャルミーティング後もいつでもつながれる状況をつくる

《推奨:ミーティング中にチャットなどで質問に答える、ミーティング後でも質問をいつでも受け付ける状況をつくり共有する》

 ミーティングの様子を録音・録画できることは、バーチャルミーティングのメリットのひとつです。リアルミーティングでは、その場にいるから伝わっている、理解されているはず、議事録があれば大丈夫だろう、と参加者個人の記憶、認識に頼りがちです。録音・録画があればそのまま共有できるため、参加できなかったメンバーへのフォローも楽で、認識の違いも生じにくいというメリットもあります。こうしたバーチャルミーティングのメリットを生かして、参加予定ではなかった職場メンバーにも共有を進め、アイデアや質問を受け付けることでメンバーの巻き込みを促進することもできます。
 また、リアルなミーティングでは質問が出ても時間の都合などで「後で個別に回答します」となりがちで、フォローも不十分なままで疑問が解消されないことがあります。バーチャルミーティングではチャットなどで質問が残っているため、ミーティング後でも回答を得やすく、質問した本人も疑問が解消され、共有された回答を見て同じような懸念を持っていたメンバーの安心にもつながります。
 職場・現場でのものごとの実践が促進するのは、メンバーの認識が合致して、懸念が払拭されているからです。そのためには、誰かに相談できる状態にあることが必要
です。リアルな職場・現場では、上司が忙しくて席にいない、リーダーがさまざまな対応で現場にいないなど、メンバーが相談したいときに相談できないことも少なくないため、次のアクション(行動)が止まってしまうのです。その点、バーチャルな空間では相談しやすい環境をつくりやすいので、この特性を生かして上司・リーダーがどこでも相談に応えやすくすることも可能です。
 リモートワーク時に仲間の状況・状態の共有は貴重な場になります。総務省のリモートワークに関する調査のなかで、「上司の理解」「同僚の理解」「他の従業員からの孤立感」といった仲間との関係性がリモートワーク実施の課題としてあげられています。リモートワークは効率性の観点からはメリットが多いのですが、仲間同士の良好な関係性があることが大前提になります。関係性をつくっていく、維持していくためには、リモートワークでお互いが接する機会であるバーチャルミーティングを有用な場にしていただきたいと思います。

 リモートワークは組織としての従業員への接し方が試される機会といえます。組織へのエンゲージメント(帰属意識)を高める機会としてリモートワークを活用してみてはいかがでしょうか。
 皆さんの実現したい組織・チーム・個人の状態を得る一助になれば幸いです。

次回はバーチャルミーティングのファシリテーション(促進方法)のポイントをお伝えします。

コンサルタントプロフィール

笠井 洋

笠井 洋

ラーニングコンサルティング事業本部 組織開発リューションセンター センター長  シニア・コンサルタント

1998年 JMAC入社。組織・人・チームを力づける、しなやかさを高める組織開発コンサルティングを主領域として活動。「組織全体を対象とした組織マネジメント改革」を主要テーマとして、チームを対象としたチーム力を向上するチームエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現に向けた活動を支援している。
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