• TOP
  • コラム
  • 笠井 洋
  • 第3回 組織・人・チームの「しなやかさ」を築く「自己決定感」を高める
第3回 組織・人・チームの「しなやかさ」を築く「自己決定感」を高める

2015年6月29日

「自己決定感」が仕事への意欲を高める

 コンサルティング、研修、ワークショップ、講演、セミナーなどで、多くの方々と対話・議論できるのは、コンサルタントの仕事の魅力のひとつだと日々感じている。こうした機会に、さまざまな方にわれわれの行動の源泉である「エンパワー=人・チームを力づける」ことが、変化に対応できる「しなやかな組織づくり」に必要な要素であることを伝え続けている。「エンパワー=人・チームを力づける」に関する対話・議論の中で感じたのは、「ウチの会社は自己決定感がとくに弱いように感じる」「誰かに決めてもらうのを待っている傾向が強い」など、自己決定感に対して課題認識を持つ方が多いということだ。

 2015年も早いもので6月になり、昇格、昇進した管理職層・経営幹部層が、組織の中でさらなる活躍を期待されて新しい部門、新しい職場へと異動し日々奮闘している姿を目にする。さまざまな企業・団体のコンサルティングを通じて認識したのは、管理職層・経営幹部層の中で「新たな挑戦を苦痛、負担と捉える」人と「新たな挑戦を成長機会として捉える」人とで大きく分かれることである。

 この違いは何から生まれるのだろうか?

 それは組織からの指示、命令を「逆らえない」「仕方がない」と受け取ってしまい、「自分が決めたことじゃないから...」と逃げ道を用意していくのか、それとも自分のなかで意味づけをして、「自分としてやろう!」と決めて受け取るのかの違いだと考える。

 私のクライアントである管理職Aさんは、長年経験を積み、成果を生んできた部門から2015年4月にまったく経験のない部門へと異動となった。リーダーシップとマネジメントの実践を期待されているが、本人としては異動の意図が理解しきれていない様子であった。

 そこで下図に示したマトリクスを一緒に見て「今の自分はどこなのか」を考えることから始めた。それほど多くの時間を必要とせずに、③《他者決定》であると理解した。そこから自分は以前の部署のときのようにすべてを知っていて、誰からも相談できる姿を追い求めていたことをやっと言葉にできた。本人から「(以前の部署に自分の姿を求めていることを)言えてラクになりました」という発言が出たことから、周囲からの期待やアドバイスを受け取れる状況になった。

col_kasai_03_01.png

 ③《他者決定》から①《自己決定》に転換することで仕事への意欲を取り戻すことができた。今ではわからないことは聴くが、聴くだけではなくその場で自分も学ぶ姿勢で部署のメンバーに関わるようになり、前回も述べた「自己効力感」も高まってきている。

 自己決定感を高めるには、今の自分の決定感を自覚して自己決定をしていくことである。これを積極的に行うことで、仕事への意欲も高まってくると考える。自分自身、周囲の仲間にも自己決定感について考える投げかけをぜひ試してほしい。

 自己決定感という考え方を意識していない、他者決定感に縛られている自分自身、仲間を解放してあげてほしい。

「自己決定感」は組織にいるすべて方に必要な要素

 さまざまな業種・業態の組織を支援している中で、経営幹部の方々と対話・議論する機会も増えてきた。日々のコンサルティングの実践で「経営とは何か?」といった問いを目の当たりにする中、経営者自身が書いた書籍を手にする機会がより一層増えている。

 経営者としての生々しい経験から生み出された教訓は迫力があり、説得力もある。多くの経営者の方々が共通に持っている教訓として(経営者にとって大事な考え方として)、「世の中に貢献すること」「人(社員も)を大切にすること」があげられる。言葉で言うのは簡単だが、実行してきたこと、これからも実行し続けることは簡単なことではない。

 では、大事な考え方を実行するために必要なことは何だろうか?

 この問いに対して多くの経営者が「最後は『覚悟』が必要」と答えている。『覚悟』さえあればやり遂げられるという。

 われわれが組織力を高めるコンサルティングで大事にしている要素の中で、今回のテーマである「自己決定感」も大切にしているのは、まさに『覚悟』ができる人が組織の中に多くいる状態をつくるためである。『覚悟』とは、自分が最後は責任を取るという意思である。そのためには他者に決まられたことを粛々と行うだけではなく、他者から支持・命令されたことを自分のこととして置き換え、視点を転換し、自分としてやろうと決めなくてはいけない。まさに自己決定感が高まっている状態である。

 組織の中に『覚悟』を持った人=自己決定感の高い人が多くいる状態であったら、みなさんの組織はどのように変わるだろうか?

 経営幹部だけではなく、管理職層、現場リーダー、チームリーダー、改善活動リーダー、若手層のコミュニティーリーダー、女性社員の中のリーダーなど、自己決定感の高い人を1人でも増やしていくことが組織力を高めるていくことを想像していただきたい。

 自ら決めて行動したことに対して、まわりくどい言い訳が少なく、周囲からは共感、認知、称賛、賛辞、助言などが得られやすい状況にもなることが経験上多い。「やってよかった」と得るものが多いというが実感である。

 高校生の漢文の時間に出会った易経の言葉「窮すれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」。今になって少しずつ理解できるような気がする。他者が決めた事柄、方針などに愚痴や批判を述べるだけではなく、自らやろうと決定してやり抜くことで、「継続する良い状態」が得られる。組織にいるすべての人たちにとって「自己決定感」を高めることが有用であることが少しでも伝わればよいと思っている。

 自己決定感をさらに高める支援を「通ずれば久し」の精神で継続していく、これは私の自己決定である。みなさんの自己決定はどのようなものだろう?

col_kasai_03_02.png

コンサルタントプロフィール

笠井 洋

笠井 洋

ラーニングコンサルティング事業本部 組織開発リューションセンター センター長  シニア・コンサルタント

1998年 JMAC入社。組織・人・チームを力づける、しなやかさを高める組織開発コンサルティングを主領域として活動。「組織全体を対象とした組織マネジメント改革」を主要テーマとして、チームを対象としたチーム力を向上するチームエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現に向けた活動を支援している。
コラム一覧を見る