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第2回 組織・人・チームの「しなやかさ」を築く「自己効力感」を高める

2015年4月30日

「自己効力感」が低い日本の職場

 高校生を対象として日本青少年研究所が行った調査によると「自分は努力すれば大抵のことができる」と回答した日本の高校生は44.4%、米国、中国では90%近く、韓国で80%以上となっている。日本の高校生たちは「やればできる」といった信念、すなわち「自己効力感」が持てない環境にあることを示している。日本の将来を担う若者たちが自分のことを自分自身で低くみている状況は無視できないと考える。
 この状況は高校生だけではなく、コンサルティングを行っているさまざまな企業、団体でも「自分たちはやればできる」、すなわち「効力感」が高くない様子が伺える。なぜ「自己効力感」が高くない状態になっているのか?――コンサルティングの実践から原因を推察すると、自分が遂行している仕事の意味、全体の中の位置づけ、成果への貢献度合いなどが見えない人が多いからだと考える。
 この状態を見て見ぬふりをしていくと、体調不良での職務離脱、業務遂行上の障害発生、職場環境の悪化による離職者の増加といった「自己効力感」が持てない状況に拍車がかかることが予想できる。
 では、どのようにして「自己効力感」を高めていくのか、考えていきたい。

「自己効力感」を高めるには

「自己効力感」とは心理学者アルバート・バンデューラ博士が提唱した概念である。提唱された概念を私なりに職場で理解しやすい言葉で表現すると、「自分の設定した目標に対して、自分の知識やスキルを用いて到達できる能力があると信じられること」である。
 人・チームの力を高め、発揮していこうとして目指す状態を共有し、目標を設定して職場での実践を促進するなかで、自己効力感が高まらない職場の上司には、以下のタイプであると感じている。すわなち、「A:部下に対して任せきれないタイプ」と「B:任せるとして任せる仕事の量と質を見極められないタイプ」である。

 自己効力感を高めるためには、
(1)達成体験
(2)代理体験《お手本》
(3)言語的励まし《認知・称賛》
(4)生理的情緒的高揚《ムード、支援姿勢》 
 (加えて必要であれば)
(5)想像体験《実践想像》の要素
を活用するとよい。

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 「A:部下に対して任せきれないタイプ」の上司は部下の(1)達成体験の機会をつくれず、部下は自分が直接実施した体験が増えず、任せられない自分に対して効力感を高められない状態が起こる。
 「B:任せるとして任せる仕事の量と質を見極められないタイプ」の上司は、任せるときに量が多めで難易度も高めの質の高い業務を部下に担当させてしまい、フォローも十分でない場合は達成体験ではなく未達成体験をつくり出し、自己効力感を下げてしまうことも起こる。

 手間はかかるが、(1)達成体験をつくるためには、上司としてフォローができる粒度(たとえば、量として1時間でやり遂げられる、質として今までの担当業務50%と新たな業務50%の業務内容)で任せ、やり遂げる機会をつくることも有用である。
 上司自身の経験とカンだけで部下の「自己効力感」を高めるのではなく、部下のモノサシで高める達成体験をつくることが、結果として上司自身の身を助けることになる。同時に部下の成長が促進されて組織が力づけられ、まさに組織エンパワー状態の実現に近づくことになる。
 達成経験をすぐにつくれないのであれば、近くのお手本となる人の一挙手一投足を見ることができる機会をつくるとよい。仕事の機会を与えない、悪気がなくても部下を放置してしまう――この状態こそが「自分は必要とされていない、実践の機会も、見る機会もない......」と部下が感じて、仕事以前に自分の存在意味を疑ってしまう状況をつくってしまう。この状況では自己効力感が高まらないのは想像に難くない。

 (3)言語的励まし《認知・称賛》、(4)生理的情緒的高揚《ムード、支援姿勢》は職場の雰囲気を変えていくことにつながる。職場環境がポジティブであり、自分自身が認められる場であること、話し合える場であることが自分の仕事の意味、全体の中での位置づけ、成果への貢献を認識できる状況をつくることに大きな影響を及ぼす。

 読者のみなさんの職場の人およびチームの"効力感"を再度確認してみてはどうだろうか?
 自己効力を高める要素と照らし合わせ、状況を認識し、人およびチームの"効力感"を高めるために何から変えていくのかを考えてみてはどうだろうか?

コンサルタントプロフィール

笠井 洋

笠井 洋

ラーニングコンサルティング事業本部 組織開発リューションセンター センター長  シニア・コンサルタント

1998年 JMAC入社。組織・人・チームを力づける、しなやかさを高める組織開発コンサルティングを主領域として活動。「組織全体を対象とした組織マネジメント改革」を主要テーマとして、チームを対象としたチーム力を向上するチームエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現、個人を対象とした人間力を高めるセルフエンパワーの実現に向けた活動を支援している。
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