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企業的農業経営の進展と求められる経営の高度化

2016年4月17日

 農業は、TPPによる影響、小売事業者(消費者)ニーズ多様化への対応、農業就業人口の減少や高齢化など、年々厳しい環境へと変化している。農業経営対数は、全体では減少傾向にあるものの、農業法人は増加しており(2010年→2015年)、また10ha以上の大規模農家の経営体数は5年前と比較し20%増加している。

 農業は大規模化の傾向にあり、法人化の進展とともに、農業生産者の経営化志向(企業的農業経営志向)は高まっている。家族経営の延長線から企業的農業経営に移行し、多くの課題に直面している農業生産者は多い。家族では暗黙の了解で意思疎通できていたことが、経営の大規模化により従業員数が増加すると困難になり、簡単なホウ・レン・ソウができていないために、収益に多大な影響をもたらすことも少なくない。
 企業的農業経営では、変化・変動への迅速かつ適切な対応が成功のポイントで、具体的な課題解決として①商流の多様化への対応、②農業経営の高度化、③現場力向上――が重要となる(下図)。

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 ① 商流の多様化への対応

 生産の大規模化に伴い、まとまった生産量を確保でき安定した出荷が可能になれば、小売事業者との直接契約など最適なサプライチェーン構築など有利販売を検討すべきである。これまでの系統出荷では、生産者が主導してプライシング(値づけ)できず、良い農産物を生産しても販売単価に反映させることが難しかった。
 自社の農産物の特性を考慮した取引先、エンドユーザーを意識した生産を実現することで、ニーズにマッチした商品供給を実現でき、販売単価UPや流通コスト低減により、収益向上を図ることが可能になる。

 ② 農業経営の高度化

 商流の多様化に対応するためには、戦略的な農業経営を推進することが必要となる。戦略的な農業経営とは、「誰に対して・何を・どのようにして供給するか?」の方向性を決め、それを実現するための仕組みや経営資源を確保することである。
 他の産地や生産者との競争優位をどのようにして確立すべきかを検討し、実現するための供給プロセスを構築する。また、戦略を策定しても実現できているか否かをマネジメントすることが必要で、管理指標を決めて適切タイミングで評価し、適切に対応する仕組みが重要である。
 たとえば6次産業化を志向し、栽培、加工、販売の機能・プロセスを形づくっても、適切にマネジメントできず、結果として大量の在庫処分や品切れによる機会損失ロスが発生し、強みを活かせていないケースが多い。
 これは、マネジメントの仕組みが構築できていないことと、これを管理する人材(管理者)を育成できていないことが原因となっている。経営者は、経営の大規模化・高度化に伴い、すべてのことを自分一人で担うことは難しいため、戦略を実現するための仕組み構築と人材を育成がポイントとなる。

 ③ 現場力向上

 農業は製造業と異なり、いつも同じ環境・条件では生産できないため、現場ではさまざまな変化が発生する。完全密閉の人工光型の植物工場で変化を抑制するという課題解決の方向性もあるが、設備投資やエネルギーコストの問題が解決できていないのが現状である。変化の抑制が困難であるとすれば、現場で変化を事前に察知して対応することや、変化を迅速に精緻に把握し、適正に対応することが重要となる。
 家族経営では全員が経営者意識を持ちつつノウハウを共有して問題解決することは可能だが、大規模生産で多様な従業員で実現することは難しい。家族間で継承してきた栽培ノウハウ(暗黙値)を技術化し、誰でも同じ基準、手順で作業できる作業標準を整備することがポイントとなる。
 標準・基準(正常値)が決まると、不具合(異常値)も判断できるようになり、経営者や管理者への迅速な報告を促進することも可能になる。また、現場主導で生産性向上活動や品質向上活動を推進し、日々の問題に敏感になることや、標準をさらにレベルアップさせていくことを常態化させ、変革意識・改善意識を醸成することも重要となる。




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