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コストを可視化する物流改善 ~中堅・中小企業の改革物語~

2018年8月31日

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物流のコスト可視化が求められる背景

物流におけるコスト管理は、ものづくりそのもののコスト管理に比べると、必ずしも精緻には行なわれていない場合が多いと思われます。例えば工場内のものの運搬や保管・荷役などにかかるコストは、殆どが製造工程のどこかに含まれており、「場内物流」として単独でコスト把握されているケースはまれです。

また、工場からの製品物流においてはこれまでヨコ持ちなどの幹線輸送やパレット単位入出荷などが中心であった為、あまり詳細な原価把握を行なう必要がなかったことも事実です。

しかし、昨今物流を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。多くのメーカーが抜本的な物流費の圧縮を進めており、特に顧客への「直送化」を進める企業がここ数年急増しています。直送化の進展は物流に以下のような変化をもたらすことになります。

  • バラ出荷・流通加工増大による業務量増加
  • 受信~出荷の短リードタイム化
  • 車輌発着頻度の増大
  • 直送納品先顧客へのきめ細かな対応

これらの要素は全て、物流コストに影響を与えることになります。その際に、物流コストの実態が把握されていないと、物流で起こっている様々なロスを看過することになります。こうした事態を防ぐ為にも、物流コストを適切かつタイムリーに可視化し、コスト低減・適正化をスピーディに行なうことが求められています。

物流コスト把握の目指すべき構造

物流コストの元となる物流機能は、大きく「調達物流」「場内物流」「製品物流」に分けられます。調達物流は部品や原料調達の際の輸送や荷受荷役、場内物流は工場内・製造工程内の荷役や場内搬送・保管、製品物流は主に工場出荷場の入出荷荷役・保管・さらには製品輸配送までを指します。

上記の区分ごとに、コストを把握すべき詳細レベルは異なってきます。調達物流は主な製品群別・調達先別にコストが捉えられれば管理の為には充分です。場内物流は工程別・費目別のコスト把握を行なうことで、適切なコスト可視化によるコスト管理・最適化が可能となる。そして製品物流は、冒頭に述べた直送化の進展に伴い製品別・顧客別・方面別と言ったかなり詳細なコスト把握が求められています。

物流のコスト可視化における主要な問題点

  1. 物流機能別のコストが明確に把握されていないため、コスト増減の原因がつかみにくく、コスト改善が進まない。
  2. 製品別・サービス別・顧客別といった単位での物流コスト・収支が明らかになっていない場合が多く、何にどのくらい物流コストがかかっているかが分からない。
  3. コスト管理情報が収集・共有化されるタイミングが実務とマッチしていず、物流コストマネジメントを行なうことが出来ない。
  4. 製造原価計算における「標準原価」という概念が,物流コストに関しては存在しない場合が多く、適切な物流コストを設定できない。

物流コスト可視化に向けた改善のポイント

1.物流機能別コストの可視化

まず、「調達」「場内」「製品」3つの物流機能におけるコスト可視化上の問題点と対策を考えていきたいと思います。調達物流コストは、多くの場合取引・支払単価(ロット単価・梱包単価など)に含まれています。このため、非効率な物流が行なわれていても気づかれないことが多々あります(倉庫・協力工場間の物流効率低下原因としては、例えば「同じルートを何度も往復している」「生産ロットよりも物流ロットのほうが大きいため1回当たりの運搬効率が低下する」といった点が挙げられる)。

方策としては、取引単価から物流費を分割することが最も有効です。現在の取引単価が例えば1ケース100円であれば、そのうち運賃が15円、保管料が10円...という形で機能別に分解して物流コストを捉えなければなりません。

このためには自社だけではなく、協力会社を巻き込んだコスト実態の把握が必要となります。こうしたことをしっかりと行なっておけば、例えば共同集荷(ミルクラン)方式の混載調達を行なっていても、サプライヤー別・部材別などの物流コストを実態に即して把握することが可能となります。

場内物流コストは、前述の通りそのまま把握することは困難です。このため、例えば以下のような不具合が発生していても気づかれないことが多いのです。

  • 物流費削減のために物流マンの人数のみを減らし、その結果場内物流作業工数が工場作業者に転嫁されてしまい、作業者の生産性がかえって低下する。
  • 部品供給が適切なタイミングで行なわれていない為、ラインリーダーが部品置き場まで物を取りに行く「搬送」工数が発生する。
  • ロット違いや計画変更などで外部倉庫から仕掛品を頻繁に場内へ搬入しなければならず、工場作業者の稼働率が低下している。

場内物流コスト管理を的確に行うためには、上記のような作業・ロスに着目して、それにかかる工数やコストを把握しておくことが有効となります。このためには、場内物流の業務フロー・工程を確実に整理して、流れを押さえておくことが必要となります。

2.製品・顧客別物流コストの可視化

よく知られたコスト管理手法として「ABC(活動基準原価計算)」が広く用いられるようになっています。しかし、ABCを定義どおりに導入し、当初狙った成果を上げている企業はあまり多くないのが実情です。その原因は、アクティビティ別のコスト・時間をデータベース化するという作業が非常に煩雑であるためです。

実務上、ABCに必要なデータベース(特に労務実績)を整備しタイムリーにメンテナンスする為には、かなりの額のIT投資が事実上不可欠になってきます。

実際のABC適用局面では、アクティビティ別のコスト・単位時間を詳細に把握するより、まず「製品(サービス)別」「顧客別」コストあるいは収支を把握することのほうが手間に対して高い効果を生みます。特に冒頭に述べた「工場直送化」が進んでいる工場物流では、顧客別物流コスト把握の重要性が高くなります。

あるメーカーの工場隣接倉庫における提供サービス別収支を実際に分析した結果、パレット・ケースなど荷役最小単位別の収支を比較し、荷が細かいほど手数がかかり赤字になるが料率は均一である点を改善課題とした事例もあります。特に製品別・顧客別収支把握のためには、適切な配賦基準(コストドライバー)設定とそのデータ取得が最重要項目となります。

3.コスト把握のタイミング適正化

物流コストは、需要予測情報や在庫情報、あるいは作業進捗情報のように、リアルタイムに把握しなければならないという性格のものではありません。しかし、経営あるいは現場管理の意思決定に役立つ程度の頻度ではしっかりと把握されなければなりません。

具体的には、ある期間(月別・週別など)の実績原価を捉え、これをあるべき原価と比較することが有効です。このためには、物流標準原価設定が必要となります。こうした取組みを確実に行なうには、コストの変動に関わる実績情報(入出荷物量・金額・投入工数・納品件数など)を管理のタイミングと同期化させて収集できる情報システムの仕組みも必要なってきます。

4.「物流標準原価」の設定と運用

メーカーにおいて、標準原価の設定と運用はごく当たり前に行なわれていますが、物流コスト管理において標準原価が設定されている例はあまり見られません。これには以下の原因が考えらます。

  • 運賃や労務費などは多くが外部委託であり、契約単価は業務標準よりも取引利害や外部会社との関係において決定される場合が多い。
  • 製造原価計算における「能率」「操業度」といったロス・歩留に関する概念が物流の場合は薄い(業務が物量の波動に左右されることがその大きな要因である)。

今後は物流コストにおいても物流標準原価を設定し、それと実勢コストの差異を見ることでより能動的な物流コスト管理・予算管理を実現することが有効となります。

物流コストの詳細な把握は容易ではありませんが、実態の正しい把握無くして改善もあり得ません。目的や領域に応じた合理的な対策を打たれることを期待しています。

【執筆】

小澤 勇夫氏
ロジスティクス革新センター長 シニア・コンサルタント

物流・SCM領域においてコンサルティング活動を行っている。
中心領域は、事業戦略視点からのビジョン設定・事業企画および、効率化視点からの拠点設計・在庫管理・荷役設計・生産管理などである。近年では、物流センター構想立案とセンター建設に対するコンストラクションマネジメントを手がけ建設・運用費用の大幅なコストダウンを実現している。海外企業では、自動車のパーツ供給コンサルティングを欧州と北米で展開。

※本稿はNECサイトに掲載したコラムからの転載です。