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M&Aで狙う新たな成長戦略 ~中堅・中小企業の改革物語~

2018年9月 4日

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コンサルティング会社は、お客様から様々なご相談を受ける。その内容の変化は、ある意味で世の中の企業経営者の関心や課題認識の動きを映す「鏡」である。筆者はとあるコンサルティング会社の中で主に経営戦略ないしは事業戦略という分野を担当しているが、最近、お客様の要望に明確な変化を感じている。

従来は、リーマンショック以降長らく低迷が続いた日本経済の状況を反映して「悪化した収益性を改善したい」「経営再建をしたい」、あるいはさらに状況が良くない場合には、金融機関などの助力ち得ながら「企業再生に取り組みたい」といった、厳しい内容の相談は非常に多かった。

ところが2013年の後半くらいから、こうした経営相談は明らかに減少し、変わって「成長戦略に取り組みたい」というものである。成長戦略というと少し小難しく聞こえるが、要するに「もっと会社の売上を伸ばしたい」「再び会社を成長軌道に戻したい」ということだ。

こうした成長戦略の中身を少し組解いて見てみると、最近は特に

①新事業の開発
②海外事業の拡大
③M&A(Mergers & Acquisitions:会社の合併や買収)

の3つのテーマが高い関心を集めている。企業の規模を問わず、これらのテーマ単独あるいは、2つないし3つを組み合わせて「どうやって事業を成長させるか」ということを、多くの経営者が真剣に考え抜こうとしている。


これまでM&Aといえば、中堅中小企業にとっては、「事業継承のために売る」という側面からの関心が高かった。オーナー経営者が引退の時期を迎えて従業員や子弟に事業の後継を託すことが難しい場合に、事業継続、取引先や顧客との関係維持、さらには従業員の雇用確保の観点から、第三者に会社(事業)を譲渡してこれらを継承する手法として、M&Aが脚光を浴びさまざまな形で活用されてきた。

本稿ではこれとは逆に、「成長戦略の一環として買う」視点から、弊社がコシサルテイング支緩した企業の例を紹介する形でM&Aの活用を解説してみたい。

M&Aを取り入れた事例

電子機器製造A社

最初に紹介する電子機器製造A社は、堅調な業績を上げていたが経営者はそれに満足していなかった。厳しさを増す国内市場で生き残るためには、事業規模の拡大と収益基盤の強化が必要で自社にない強みを持つ他社をM&Aによって取り込むことで「成長のスピードを買う」ことが有効と考えた。
まず、公開情報や業界内人脈を通じた情報を集め、同社の川上(仕入れ先)、川下(販売チャネル)、競合(同業他社)および近接周辺市場の事業者に対する買収成立の可能性とメリットを調査して、A社から見た各市場の魅力の大きさを測った。

その結果、競合市場および近接周辺市場が魅力的と見当がついた。

次に、それらの市場の中でM&Aの候補になり得る企業について具体的社名を挙げてリヌトアッフし、詳細情報の調査をおこなって追加分析をおこなった。収益性、財務健全性、技術力、営業力、人材の観点から客観的に分析するだけでなく、各社の経営環境から見て経営者が買収交渉に応じる可能性があるかどかうを吟昧し、量終的に、自社の事業に近接する特殊市場で高収益を誇るX社を最有望候禍先企業として選び出した。
X社への実際のアプローチと交渉材料を準備する一方、M&Aの形態として吸収合併するか子会社化するか、統合後の事業戦略とマネジメント運営をどうするか、肝心の質収に際して評価価格はX社の事業の実力から見ていくらになるのか、などが手ぬかりなく事前検討された。

実際の買収交渉にはさまざまな符余曲折を経たちのの、A社の経営者の思い描いた成長シナリオが着々と進められている。

設備業B社

次に紹介する設備業B社は、東南アシア子会社の経営が行き詰っていた。同社は、取引先の自動車会社C社の要請に応じて東南アシア某国に設備供給&メンテナンスをおこなう現地法人を10年以上前に設立した。
顧客の工場がどんどん海外に移転していく中で「お客の求めに応じて否応なく」進出した形だった。「成長するアジアに進出すればC社以外の仕事も取れるはず」という期待があったが、予想外に現地市場の成熟化は早く進み、競争激化で採算確保も成長も覚束なくなってしまった。

B社の悩みは「施工能力=協力業者ネットワークの拡大」と「駐在日本人頼りの高コスト体質の是正」だが、後発小規模の同社が独力でこれらを克服するのは容易ではない。結論として選択したのは「現地工事会社のM&Aによる事業体制拡大」だった。

もちろん、海外で良い買収対象となるロー力ル企業を探し出すのはそう簡単ではない。日本と異なり、アジアでは業界ごとの企業リストや各企業の内部情報について高い精度のものを入手すること自体が容易ではない。

B社は不完全な情報に頼ることをやめて、協力してくれる現地の法律事務所の手を借りて地道に多くの口ーカル企業を訪ね歩き、自社のニーズに合致して協業可能な企業(およびそれが可能な信頼できる口一力ル経営者)を探した。

その甲斐あって現地企業Y社との新たな合弁子会社設立構想具体化にこぎつけ、ローカル工ンジニアと協力業者群を含む施工体制という、東南アジアで競合各社が今もっとも欲しがる経営資源を一気に手に入れ、B社の反転攻勢がこれから始まろうとしている。

こうしたM&Aの検討と具体化に際しては、次の3点が特に重要である。

・自社および相手先の経営状態(外部および内部)についての精度の高い情報
・客観的な「力ネ目」の分析による投資と回収の見極め
・事業に精通した専門家による、現場目線でのリアルな競争力評価


A社、B社のケースともに、手前味噌ながら弊社のコンサルタントが両社のプロジェクトメンバーと密接に協業することによってこれらの条件を実現してきた。局面によっては金融機関等からファイナンスについての適切な助言を得ることも必要になる。中堅中小企業にとってはこれら外部の力をどううまく使うかという点が知恵の使いどころである。

以上述べてきたように、企業成長のための有力な手段としてM&Aは今や中堅中小企業にとっても「ふつうの選択肢」になりつつある。もちろん、他社を「買う」わけだから買収資金の調達という関門は当然ある上に、事業と組織・人材を統合して成果を出すためには様々な苦労もある。一般的に言って通常よりもリスクを取る投資となることは否めない。

それでも、事業成長に向けて果敢にM&Aに踏み切る企業経営者は間違いなく増えてきている。私たちコンサルタン卜はその決意と経宮判断を的確にサポー卜できるように、いっそう研鑓を積んでいきたいと考えている。

【執筆】

小笠原 一洋
戦略コンサルティングセンター長シニア・コンサルタント

事業プロセスと情報システムの再構築、販売部門および間接部門の業務改革と機能・要員の再編など業務プロセス改革(BPR)を専門テーマとする。精密機械・医薬・化学・食品等の製造業、金融・不動産等の各種サービス業、およびエネルギー・情報通信等のインフラ産業で100社以上のコンサルティング経験を有する。近年は東南アジアを中心に海外事業の拡大/再構築の支援にも注力している。

※本稿はNECサイトに掲載したコラムからの転載です。