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株式会社ノーリツ
技術シーズ探索でお客様に驚きと感動を 〜「この研究は私がやる」一人称の「やりたい」が新価値を生みだす〜

2018年10月 9日

 開発は「楽(らく)」ではないが、「楽しい」――技術者のものづくりへのモチベーションは、こうした想いに支えられている。ゆえに開発の現場においては、技術者が「やりたいこと」と企業が「求めること」をどのようにつなぎ、成果に結びつけるかが重要となる。ノーリツでは、技術者たちが本当にやりたいことを追究できる場をつくり、技術シーズ探索で一定の成果を出しつつある。そこには、実業務とプロジェクトの両立に悩みながらも、活動を楽しむメンバーの姿があった。今回、その活動の軌跡と今後の展望を伺った。

ミッションは新価値創造 それは3人の特命チームから始まった

 ガス給湯機器でおなじみのノーリツは、戦後間もない1951年(昭和26年)に創業した。「お風呂は人を幸せにする」という想いを原点に、戦後の復興期に人々の生活環境を向上させるべく、日本における風呂文化の普及に尽力してきた。創業から67年経った今、「NORITZ」のロゴとともにわれわれの生活に浸透した自宅風呂文化は、日本の良き習慣として定着した。

 しかしこの10年で、ノーリツは大きな環境の変化を迎えた。新築着工件数の減少とともに国内需要も減りつつあるのだ。結果、原価低減に注力する時代が長く続いた。こうした中において、開発部門の技術者たちは目先の業務に忙殺され、「新しい価値を生みだす」という本来の研究開発にはなかなか取り組めずにいたという。

 この現状を変えるべく、動き出した人物がいる。腹巻知氏(取締役 兼 常務執行役員 研究開発本部 本部長 国内事業本部 温水事業部 部長)だ。腹巻氏は35年前の入社以来、技術畑を歩んできた。グループ会社での社長を経て7年前にノーリツの研究開発本部に戻ったとき、「開発部門はコストダウンするための部隊ではない。新しい機能を開発し、商品に付加価値を生んでいくことこそが、ミッションのはずだ」と感じたという。

 そこで腹巻氏は翌2012年、「先行技術や商品の付加価値を生むための部門」を発足した。それは3名の特命チームからなる小さな組織だった。そして、すべてはここから始まった。

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取締役 兼 常務執行役員 研究開発本部 本部長 国内事業本部 温水事業部部長
腹巻 知氏

アイデアが出口までつながる 「筋のいい開発テーマ」をねらえ

 特命チームのトップとして活動したのが、濱田哲郎氏(研究開発本部 要素技術研究部 部長)だ。ミッションは「新しいことを企画・開発・管理する」と幅広く、何をすべきか模索するため「とにかくあちこちのセミナーや展示会に足を運んだ」という。JMACと出会う前には、外部講師を入れて、多くの部門・社員を対象に大規模なアイデア募集を行ったこともあったが、次につながることはなかった。

 その後も模索を続け、さまざまなセミナーに参加する中で、2013年、ついに今回の活動につながる「自社技術を活かした新事業セミナー」(日本能率協会主催)に参加することとなる。JMACチーフ・コンサルタントの高橋儀光が講師を務めていた。濱田氏は、講義後に高橋にさまざまな相談をする中で、JMACに支援を依頼することに決めたという。その経緯について高橋は「『いろいろとアイデア発想を行ったが、次につながらなかった』と相談を受ける中で、『アイデアを実績につなげる活動を一緒にやりましょう』という話になりました」と説明し、活動のポイントについては「アイデアがいくら面白くても、事業戦略がなければ出口まで行くことはできません。アイデアを出口までつなげていくためには、ビジネスとしての『筋の良さ』を整えることが重要です」と解説する。

 2014年から始まった活動では、「3名の特命チームの中にいわば『第4のメンバー』として高橋さんに入っていただいて」(濱田氏)、1年間かけて先行技術開発テーマの創出を行った。そこである程度の成果感を得たことから、さらにスピード感を持ってテーマを増やすため、研究所全体で行うプロジェクト活動へと展開することにした。
 こうして、2012年に3名の特命チームから始まった活動は、2016年2月、本部直轄のプロジェクトとして新たなスタートを切った。

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研究開発本部 要素技術研究部 部長
濱田 哲郎氏

若手のエース級メンバーを結集 自由なフィールドで開花する発想力

 プロジェクトでは、各部門から30歳前後のエース級メンバーを選抜し、3〜5名を1チームとして3チームつくった。活動目的は、「お客さまに驚きを与えるシーズアイデアの探索」。全体でテーマの方向性を決めたうえで、チームごとに自由な切り口で行うこととした。JMACの高橋は定期的にノーリツを訪問し、チームごとに面談をした。その中で、ディスカッションしながら「筋の良さ」を見るための視点をレクチャーして、次のステップへ進めるテーマの選定をしていった。

 事務局を担いながら2年目のメンバーとしても活動した浜岡益生氏(同 メカユニット研究室 第2グループ)は、実際の活動について「最初にどのようなことを調べるのか大枠を決めて、その中で自分の興味のある技術を深堀りしていきました。たとえば、"街中で見つけた技術"や"他社が使っている技術"で気になったものを深堀りしていって、『これをやってみたい』と思ったものをどんどんテーマとして選んでいくのです」と説明する。

 社外の有識者に話を聞きに行き、それを取り入れて自分なりに実験して新たな発見をしたこともあった。また、さまざまなことを調べていくうちに、自社内で埋もれていた技術を発見することもあったという。「社内で過去にやっていた人がいると、すぐに話を聞きに行けたのがよかったですね。『このときはなぜこうだったか』『どんな問題点があったのか』『その技術は今だったら使えるかもしれないのか』などを知ることができたので、いい発見ができました」(浜岡氏)

 今回のようなシーズ探索活動では、未確立の技術を調査するため、直近のニーズにマッチすることはなかなかない。しかし、先のケースでも見たように、そこで得た技術的知見は、いつか役に立つときが来るかもしれない。そこで、この活動では「誰が調べたか」「検討プロセス」「得た知見」などを「技術カタログ」と呼ぶ統一のフォーマットに整理して、蓄積することにした。濱田氏は「われわれは新規事業を次々と興す会社ではないので、この活動では事業提案ではなく『技術を財産として残す』ことを目指しています。

今後は、それを参照した人が『これを調べたのはこの人だ。話を聞きに行こう』という風にしていきたい」と蓄積した「技術カタログ」の共有・活用を積極的に進めていくとした。

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左:研究開発本部 要素技術研究部 メカユニット研究室 第2グループ 浜岡 益生氏
右:研究開発本部 要素技術研究部 新機能研究室 矢部文 彦氏

実業務とプロジェクトの両立に苦悩 「やりたい」を後押しする仕組み

 2016年2月からスタートしたプロジェクトは、今年で3年目に入った。その間の変化について腹巻氏は「報告内容を見ても、確かにこの3年でレベルは上がってきています」と一定の評価をする一方で、「もっと一人称の『私がこれをやりたいんだ』という気概がほしい」とも語る。「せっかく『筋のいい開発テーマ』を見つけても、プロジェクト終了と同時に事業部に引き継いで本人は手を引いてしまうのが惜しい。実業務を持ちながらのプロジェクト活動なので、どうしても実業務の方が気になるとは思いますが、そこを突き抜けて『もう1年、私にやらせてほしい』と言ってくれるのをわれわれは待っているのです」

 事務局は、多忙な実業務とプロジェクト活動の両立をどのようにフォローしているのであろうか。事務局リーダーの矢部文彦氏(同 新機能研究室)は、メンバーの上長に対して活動への理解をいかに浸透させるかが重要であると述べる。「昨年、2年目のメンバーたちから『両立は結構しんどかった』という声がありました。上長に自分たちのワーキングのたいへんさをもっと周知してほしいとの要望もあったので、今年の活動では上長への情報発信を念入りに行っています」

 プログラムも、試行錯誤しながら「メンバーのモチベーション向上」と「実務・事業貢献」の両立を図れるよう、調整を続けてきた。濱田氏は「現実との折り合いが難しいところが事務局の悩みです。ただ、エース級のメンバーに参加してもらっていることが、一番大きな成功の秘訣であると思っています。一人ひとりがエース級ですし、彼らもテーマを20個出せと言われたら手を抜かない。横の人たちがしっかりすごいものを出してくるので、皆競い合って『よし、私もこれをやろう』と思えてそれがまた楽しい、という話は聞いています」と語る。

 JMAC高橋は、「『楽(らく)』ではないけど『楽しい』という感覚ですよね。負荷的には本当にきついと思います。エースで日常業務もきちんとやらなくてはいけないという責任感もあって、プラスJMACからのノルマもある。それでも終わった後に楽しかったと言ってくれるメンバーが本当に多く、うれしいですね。メンバーが自己実現できて、それが会社にとってもよい結果につながるような活動にしていかなければならないと思っています」と語る。

目指すはプロジェクトのルーチン化 財産を残し、未来への架け橋を築く

 今後のあるべき姿について、浜岡氏は「こういう活動を通じて、新たな技術を生み出していくことを当たり前にしていきたいと思っています。今後検討するかもしれない財産としてしっかりと形に残し、欲を言えばそれを着実にビジネスにつなげていきたいですね。1年ではなく継続できる体制にしていくと、もっと目に見えてわかりやすい成果物になってくるのではないかとも考えています。事務局としても、そこをしっかりサポートするためにメンバーの中に入っていかなくてはいけないと思っています」と語る。

 矢部氏は「事務局としては、彼らがいかに楽しく良い活動ができるかというところを支えていきたいと考えています。技術者としては、やはりもっと新しいこと、楽しいことをやりたいですね。こういう活動も通じて、いかに良い爪痕を残していけるかということだと思います。そして、その成果を認めてもらっていくことになるのではないかなと思っています」と語る。

 そして、濱田氏はプロジェクトの統括者としての想いをこう語った。「今やっていることは、本当に研究開発の仕事そのものなのです。それを今はプロジェクト活動として行っていますが、そこをいかに浸透させ、本業の中に取り込んでいけるかが課題です。そして、こういう活動を通じて一人ひとりのポテンシャルが上がっていってほしいですね。一人称で『私はこれをやる』となって、互いに『君のその研究いいね』と言い合えるような関係を築き、それが将来も横でつながっているというのが理想です。そういうところをJMACさんにきっちりと高めていただきたいですし、本業の中にいかに取り込んでいくかを一緒に考えていけたらいいなと思っています」

粗削りでも自分にしかできない 新価値創造を目指せ

 腹巻氏には、「この活動を、メンバーに選ばれることが誇りになるような活動にして、『ようやく自分もこの活動に声がかかった』と思えるような幹部候補の登竜門にしたい」という想いがある。
 そして、今後の活動に期待することは2つあるとした。1つ目は、「闊達なコミュニケーションを横の軸で広げていってほしい」というものだ。「今回のように若手層だけで同じ目標に向かってコミュニケーションをとるというシーンは、今の業務形態の中ではまずありません。若い人たちが目的を1つにして、いろんなことを考えて論議できる場は今までなかった。これはやっていけばいくほど線から面になっていくと思うので、こういう活動でしかできないコミュニケーションを活発に行ってほしい」

 2つ目は、「付加価値開発の仕組みづくり」だ。「温水機器事業はわれわれの事業の中心であると同時に、かなりコモディティ化(汎用品化)しています。今後は、差別化できる新商品を毎年ではなくともせめて3年か4年に1回ぐらいは出せるような『付加価値開発の仕組みづくり』をしていきたいと考えています。とくにメンバーが組織内で上に行けば行くほど、これはかなり現実味を帯びていきます。ですから、発想が豊かな30代のころに、粗くてもいいから付加価値開発につながる発想をこの活動を通して生んでもらいたい。そして、JMACさんにはぜひ、私たちには見えないキラリと光る個性を引き出してほしいですね」


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若手技術者の自由闊達なコミュニケーションが同社の付加価値開発の仕組みづくりを後押しする。

 「お風呂は人を幸せにする」――この想いを胸に、ノーリツの若き技術者たちは、今日も新たな価値創造を目指して走り続ける。

コンサルタントからの一言

想像力とクイックアクションがRDの創造性を高めるポイント

 ノーリツ様に限らず、企業研究所には真面目で優秀な人材が多くいらっしゃいますが、その一方で、優秀であるがゆえに、「ジャストアイデアの仮説を有識者にぶつけるのは時期尚早」として、せっかくの技術アイデアを自ら取り下げてしまうケースも散見します。確かに技術としてはまだ未成熟であっても、「限定的な用途でもいいから使ってみたい」という潜在的なシーン・お客様は存在します。そこに対して前向きな想像力を働かせ、自らのプライドの殻を破り、「バカにされるかもしれないが、仮説をぶつけてみよう」という行動を素早く起こせたときに事業成果を出せるのです。

「前向きに失敗を恐れず行動しましょう」
高橋 儀光(チーフ・コンサルタント)

※本稿は2018年10月発行のBusiness Insights Vol.67からの転載です。

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