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株式会社AIRDO
「北海道の翼」にふさわしい オンリーワンのエアラインを目指す
〜「CS行動指針」の実行で、お客様に感動の空の旅を〜

2018年6月14日

 「北海道の翼」を目指し、1996年に新規の航空会社として設立されたAIRDO。その後の環境変化を踏まえ、同社は2017年、さらなるサービス向上を目指し、新たなCS行動指針を策定した。これは、各部門から選出されたCSリーダーたちが、経営層から文言について「表現が硬い」「とんがり過ぎ」などのアドバイスを受けながらも、ひたむきに議論を重ね、つくり上げたものである。今回、CS向上推進会議に参画し、指針の策定や推進に深く関わってきた代表取締役副社長の草野晋氏に、活動への想いと今後の展望を伺った。

新たな「CS行動指針」の策定で 原点に立ち返り、サービスを見つめ直す

 AIRDOは、北海道札幌市に本社を置く航空会社である。1996年、札幌--東京間の航空運賃を各社が一斉値上げしたのを機に、「道民のために、北海道経済の活性化のために、安い航空運賃を実現するには、新規参入しかない」との想いから設立された。国内で新たに航空会社が設立されたのは実に35年ぶりで、2年後の1998年には第一便を就航し、札幌--東京間の運賃を下げたことで航空業界に大きな影響を与えた。当初1機だった航空機は現在では13機に増え、札幌--東京間を中心に道内6都市、本州4都市を結ぶ10路線で1日58便を運航している。

 こうした中、AIRDOは2016年から新たなCS行動指針の策定に動き始めた。代表取締役副社長の草野晋氏は「当社は2015年度から2018年度の中期経営戦略で、『北海道の翼にふさわしいオンリーワンのエアラインを目指す』というビジョンを掲げています。『大手でもなくLCC(格安航空会社)でもない、独自性のある航空会社になろう』と努力を続けている中で、新たな行動指針の策定に着手しました」と語る。それまでも「AIRDO Style」という名称の行動指針があったが、なぜ見直そうとしたのか。草野氏はその理由を3つ挙げた。

 1つ目は「事業環境が大きく変わったため」だ。当時、競合他社の攻勢やLCCの台頭などにより、AIRDOの基幹路線であり原点でもある東京--札幌線の利用率が低下し続けていた。「われわれを育ててくださった北海道在住のお客様に、かつてのような強い支持を得られなくなったのは大きな問題でした」

 2つ目は「原点に立ち返るため」だ。「これまで規模を拡大する過程で、十分に目が行き届かなかった社員一人ひとりの想いや組織のあり方、そして何よりもお客様の気持ちに寄り添ったサービスができているかについて、原点に立ち返って見つめ直すべきだと考えました」

 3つ目は「安全行動指針と両輪となるような行動指針をつくるため」だ。「安全」と「顧客満足」はAIRDOの事業運営上の両輪で、その行動指針も重要な位置づけにある。しかし、当時は「安全行動指針」が浸透している一方で、「AIRDO Style」は複雑で十分に活用されていなかったという。「そのため、安全行動指針と両輪となるような、わかりやすい行動指針をつくりたいと考えました」

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代表取締役副社長の草野晋氏

なぜ定着しなかったのか 時間をかけて徹底検証する

 そこで、策定にあたっては外部の支援を受けることに決め、選択の際には4つの点で評価したという。「1つ目はプロジェクトへの『熱意』、2つ目はわれわれの想いへの『理解度』、3つ目は当社との役割分担がイメージしやすいか、経験豊富なコンサルタントが責任を持って取り組んでくれるかという『進め方』、4つ目は『他社事例の経験数』です。この4点について数社から企画書をいただいて、総合的に判断してJMACを選びました」

 こうして2016年7月、AIRDOはJMACをパートナーとして新たなCS行動指針の策定に乗り出した。

 プロジェクトは、各部門から選出されたCSリーダー19人で進めることになった。策定にあたりまず行ったのは、当時の「AIRDO Style」の検証だ。全社員へのアンケートや顧客満足度調査を実施したうえで、なぜ浸透しなかったのか、内容的に妥当なのかを2ヵ月かけて検証した。検証に時間をかけた理由について、JMACの蛭田潤(シニア・コンサルタント)はこう説明する。「新しいCS行動指針を策定する前に、『もともとあったものがなぜ定着していないのか』といったメカニズムも含めて見ていかなければ、せっかくいいものをつくってもまた忘れられたり、定着しなかったり、ということになりかねません。そのため、検証に重点を置きました」

 また、若手中心のCSリーダーにこうしたプロジェクトの経験者がいないことも関係していた。時間をかけて検証することで、「実態はどうなっているのか」「これはそもそもどういう意味でつくったのか」などの共通認識を持って議論ができるようになった。草野氏は「いきなり議論に入ってまとまらなくなるリスクを感じていたので、最初に基本的な方向性を決めてから議論に入るということはかなり意識しました。策定の実質的な議論をする前に、CSリーダーたちが『行動指針はこうあるべきだ』というところを認識できたのもよかったと思います」と述べる。

経営層からのアドバイスで再検討も 一言一句を吟味し、想いを込める

 方向性が決まった後は、策定のための討議に入った。ここでは、CSリーダーが提出した案をCS向上推進会議に提示し、経営層で議論をしてアドバイスするという方法をとった。最終的に策定されたCS行動指針は次のとおりだ。


      【CS行動指針】

■お客様のために、

  高い志と情熱を持ち、
  自分ができることを考え抜いて行動します。

  強いチームワークで、
  期待を超える満足を創造します。

  北海道の翼として、
  新たな価値の実現に挑戦し続けます。



 この中で、まず論点になったのが「行動指針の対象は誰か」だ。「世の中の経営論ではすべてのステークホルダーに使命を果たしなさいと言われていますが、わかりやすい行動指針にするために、対象をお客様に限定しました。これがひとつはずみになって、大きな方向性が決まりました」(草野氏)

 次に論点となったのは、「社員全員が共感できる言葉選び」だ。お客様と直に接しない事務系や整備系の社員にも、顧客満足を意識してほしかった。そこで、特定の部門の仕事を想起させる文言は入れず、さまざまな場面・職種で使える「自分ができることを考え抜いて行動する」とした。

 もうひとつ論点になったのは、「北海道の翼」という言葉を入れるかだ。特定の地域へのこだわりはかえって事業展開の制約につながるとの意見もあった。しかし、「大手でもなくLCCでもない、独自性のある航空会社」を目指すAIRDOにとって、キーファクターは北海道であることを明確にした方が、会社の方向性がわかりやすいと考えた。

 また、この行動指針は「個人」「チーム」「企業」の三層構造になっているが、この点について草野氏は「個人はチームを、チームリーダーは会社全体をというふうに、それぞれが一段上の立場から物事を考え、行動してほしいと思っていたので、JMACから『キーワードを三層にわけましょう』とアドバイスを受けたときには、『とてもいい、これはいける』と感じました」と語る。

 これらの草案を練る際には、経営層とCSリーダーとのやりとりが幾度となく行われた。草野氏は「CSリーダーがモチベーションを持って主体的に決めていくという基本方針がある一方で、これはたいへん重要な経営テーマでもあることから、そのバランスをどうとるかに非常に苦労した」と振り返る。とくに初回は双方のイメージのギャップが大きく、「ほぼ出直しだ」と差し戻した。「最初の頃にCSリーダーから出てきたものは網羅的で、力が入りすぎてゴツゴツした印象でした。経営陣としては、もっと『日常的に血となり肉となるような言葉にしてほしい』という意識が強く、そこのギャップが大きかった」

 こうして議論を重ね、考え抜いて策定したCS行動指針は、2017年2月のCS向上推進会議において満場一致で承認された。

「お客様の声を聞かせてほしい」 率先して動き出した整備士たち

 新たなCS行動指針は同年4月から施行され、経営方針も「日本一好感度の高い航空会社を目指し、全部門で顧客満足度の向上に資する具体的な取り組みを実施する」とした。施行後は、CSリーダーが先頭に立って部門独自の活動に取り組んできた。月1回の定例ミーティングでは、活動実績を発表し、水平展開を図っている。

 こうした活動の中で、草野氏が一番大きな変化を感じたのは「お客様と直に接しない社員も、顧客満足を強く意識するようになった」ことだと語る。整備部門からCS推進室に対して「機内設備の不具合に関するお客様の声を、四半期に一度まとめて教えてほしい」と初めて要請が来たことに加え、その分析結果をもとに「社員が私用・社用で搭乗したときには機内のオーディオを試し、不具合があったら知らせてほしい」という提案があったという。

 オーディオサービスは乗客が期待するサービスの上位にくるが、安全には関わらないため定期的な整備点検が求められていない。ゆえに整備士が不具合に気がつくことは難しく、乗客に指摘されない限り発見できないという実態があった。CS推進室は早速この提案を社内報で発信し、全社員に共有した。草野氏は「お客様と直に接していない整備の人たちからの声だったことに驚きましたし、うれしかったですね。特定の部門の仕事を想起させないで、みんなで共感しようということをねらった行動指針から、良い成果が生まれました。これがほかの部門に火をつけてくれると、とてもいいですね」と期待を込める。

定着に向けて、これからが勝負だ お客様への貢献を実感できる活動に

 これまでの活動を振り返り、草野氏は「JMACには本当に親身に関わっていただきました。策定中は、CSリーダーミーティングをスムーズに進める丁寧なファシリテートや、熱い想いを込めた数多くの文章案の提示をしていただきましたし、策定後にはワークショップに関わっていただいたことで、浸透を促進することができました」と語る。

 とはいえ、まだまだ浸透途上であるとし、「せっかくわかりやすく身につきやすい行動指針ができたので、今後この指針が社員の血となり肉となり定着化させていくために、これからも実践的なアドバイスをしていただきたいと思っています。浸透させることが一番難しいので、これからが勝負です」と今後を見据える。

 JMACの蛭田は「CSリーダーミーティングでは活発な議論が行われ、まさに部門の垣根を超えた相互刺激の場となりました。今後AIRDOの中堅として経営の一翼を担っていく方々の相互刺激の場としても、とてもよかったのではないかと思います。浸透・定着に向けて、お互いの行動をきちんと見て認め合い、常日頃から『今までにない高い志と情熱でやっているね』『チームワークよかったね』とコミュニケーションしていくことが大切です」と述べる。

 今後は、「社内啓発説明会」「研修」「CS行動指針賞」の3つの施策を通じて浸透を促進し、定着させていくことになる。「社内啓発説明会」では、CSリーダーの活動やCS調査結果を説明して社内啓蒙活動を深め、新入社員を含めた階層別の「研修」でも、顧客満足や行動指針に従って行動することの重要性を伝えていく。「CS行動指針賞」では、CS行動指針を体現した人を表彰して裾野を広げることを目指す。「やはり、体現した人がほめられることで浸透するルートも必要です。今後は、社員一人ひとりがお客様への貢献を実感できるよう、お客様からおほめいただいたことがもっとダイレクトに本人に伝わるようにしていきたいと思っています」(草野氏)

「北海道の翼」にふさわしい オンリーワンのエアラインを目指す

 2018年12月に就航20周年という節目を迎えるAIRDO。草野氏はこの20年を振り返りつつ、「企業というのは難しいもので、ずっと成長を続けていると、どこかに歪みが生じます。当社はこれまで路線を拡大し続けてきましたが、運航乗務員の確保が追いつかず、路線便数を見直す必要に迫られました。今は次の20年の飛躍に向けて、いったん足元を見つめ直し、成長に伴って追いついていなかった部分をしっかりと安定させるときだと考えています」と語る。

 今後の経営課題については「われわれは『北海道の翼にふさわしいエアラインとは何か』を常に考えなくてはならないと思っています。私自身は『北海道にAIRDOがあってよかった』『北海道にはAIRDOがあるんだぞ』と誇りに思っていただけるような会社になろうよ、ということだと思っています。その実現にあたっては、経営陣はこうしなさいと指示するのではなく、大きな方向性を明示するにとどめて、具体的なことは社員一人ひとりが自分で考えて行動できるような会社にしていきたいと考えています」と語り、社員たちの「新たな価値の実現への挑戦」に大きな期待を寄せているとした。

 「北海道の翼」----就航から20年目を迎える今もその信念は変わることはない。オンリーワンのエアラインを目指し、AIRDOはこれからも独自の道を歩み続ける。

CS行動指針策定に携わったCSリーダーの声

・行動・創造・挑戦と3つのキーワードとCSリーダーみんなの想いからつくり上げたCS行動指針です。AIRDO全体に浸透し、みなさんに活用してもらえることを期待しています。

・新しいCS行動指針は「自分のため」「チームのため」「会社のため」、そして何より「お客様のため」のアクションをまとめたツールです。みんなでAIRDOらしさを体現していきましょう。

・どうすべきか迷ったときに、このCS行動指針を思い返し、みなさんのすべての行動が「お客様のために」へつながるようになれば最高です!

(AIRDO社内報より抜粋・編集)

担当コンサルタントからの一言

行動指針は自社"らしさ"実現と働きがい向上の源泉

 理念や行動指針は多くの企業にありますが、浸透や実践まで至らず「空文化」している残念な例も見受けられます。AIRDO様では中堅社員であるCSリーダーを中心に経営陣との対話を通じて、これまでの行動指針の徹底的なレビューを行い、「AIRDOらしい」CS行動指針を策定しました。そして現在進行中のCS行動指針に込められた想いに全社員が共感し、実践する活動をされています。一人ひとり・チーム・企業全体がCS行動指針を体現することによって、「お客様からAIRDOらしさを認めていただく→社員の貢献実感が高まる→働きがいが向上する」という好循環が重要と考えます。

「一人ひとりが行動指針を体現していますか?」
蛭田 潤(シニア・コンサルタント)

※本稿は2018年6月発行のBusiness Insights Vol.66からの転載です。

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