会社概要
English
TPM (English)
サイトマップ
  • 文字サイズ
  • 縮小
  • 拡大
印刷
お問い合わせ番号0120-096-580

経営を支える人づくり〜変化に対応できる組織能力とは〜

「変わる・変わらない/変える・変えない」をマネジメントする

jmac_eyes_07_01p.jpg 企業の持続的成長には革新が不可欠ですが、人づくりはその基盤であり、もっとも影響力の大きい要素です。同じ経営環境で業績に高低が出るのはなぜでしょうか? 企業を取り巻く特殊な外的要因や偶発的要因を除けば、誰が何を意思決定し、どのように取り組んだか、すなわち人と組織の行動が業績結果を左右します。個人と集団が持つポテンシャルを企業総体としての業績にどうつなげるかが、経営の要諦なのです。

 革新を考えるとき、4つの側面を意識する必要があります。第一に「変えようとしなくても変化してしまう」という点です。第二は「変えようとしてもなかなか変わらない」、そして「変える必要があるのに変えようとしない」、最後に「変える必要がないのに変えてしまう」という側面です。

 革新への取組みとは「変わる・変わらない/変える・変えない」を最適にマネジメントすることです。当然、人材についてもまた同じ問いが必要です。人は年齢によって自然に変化します。高齢化社会の到来は数十年も前から高い確度で予測されていました。しかし、備えるに十分長い時間があったにも関わらず、社会的にも対応しきれていない実態が多々あります。変わることへの事前対応はもっと研究と実践が必要です。また、もっとも難しいのが人の価値観の変革です。「分かっているが変えられないのが人の性(さが)」と言ってしまえば思考停止になります。現実にどう対処すればいいのか、人と組織の変化をもたらす根幹は何かを考察してみましょう。

 人材革新は簡単ではありませんが、優れた変革を実現してきた企業も数多くあります。たとえば、外部から招かれたトップが、従来のしがらみや慣習にとらわれず自社の発展に必要な価値観や行動様式を提示し、粘り強く社員と対話して心をつかみ、行動変革を起こして成功するのは一つのモデルと言えます。しかし成功の根底に何があるのかは、なかなかつかみ切れないものです。成功事例を自社に取り入れてもうまくいかないことは、多くのビジネスパーソンが経験しています。また、トップが強い決意で変革を促しても思いのほか成功しないケースもあります。その違いは何なのでしょうか? もちろん、トップの戦略的な判断が間違っている場合もありますが、その点は別として人と組織の側面からこの点を考えてみます。

柔軟な「組織学習能力」=変革能力

 たとえば、トップが改革を訴えそれが成功する場合、トップの思いが現場に伝わり、意識・行動の素早い変化、あるいは着実な変化が現場に生じています。発想が革新的であるほど既存の文化との衝突が起きますが、そのストレスをしなやかに前進のエネルギーに変えられる組織こそ変革能力の高い組織なのです。

 新規事業に参入するとき、外部人材を獲得して挑戦する場合が多く見られます。そこでは外と内の効果的なコラボレーションが重要です。新規事業は既存事業の文化では通用しないリスクがあります。よくあるのが、事業特性を見極めずに本業の成功パターンを踏襲して失敗するケースです。

 一方で異業種からの参入は業界価値観を打ち破る可能性を秘めています。既存事業と新規事業の特性の衝突は他社との競争の前にまず社内で発生します。外部からの雇用人材と内部人材の関係に表れるわけです。外部人材は内側から気づきにくい自社の長所を発掘し、内部人材は外部人材との違いを乗り越えて経験価値を自社に取り入れる――こうした柔軟な学習能力がコラボレーションの成否を握っているのです。

 これまで数多くの企業の変革場面に立ち会ってきました。そこで実感したのは、人と組織が変革する局面では変革の方向に沿って新しい学習を始める柔軟な「組織学習能力」があるかどうかが、成否を分けるということです。企業の変化対応力は、業績の高低からは判断できません。

 では、柔軟な組織学習能力を持つにはどうしたらよいのでしょうか? 世の中には人づくりに関連するさまざまな理論、手法がありますが、30年以上企業の人づくりに関わっていると、そのエッセンスは実にシンプルなことなのです。人づくりに成功・失敗があるとすれば、その要因をどこまで掘り下げるか、どのように定着・進化させ続けるか、にかかっています。この観点から2つのアプローチを紹介します。

学びの原則をどこまで実践しているか

 1つ目のアプローチは「学び」の原則です(下図)。この図は10年ほど前に組織学習の要件を考察してまとめたものです。

jmac_eyes_07_01.png

 組織の学習性を見る際にこの7項目、とくに前半の4項目の有無が気になることが多いのです。たとえば、学んだことをすぐ「1.実践」する風土があるかどうかは、基礎的なレベルでの変革能力の高低につながります。中期的には実践のスピードや高さで大きな実力の差になっていきます。実践は当たり前という風土の企業同士を比較してみると、実践後の教訓抽出能力で差がつきます。「2.教訓」とは「今度同じことに取り組むとしたら、どういうポイントを踏まえて行うか」への回答ですが、教訓を抽出できるかどうかの判定は簡単です。部下に問いかけてみて「常に、いつも、たちどころに」答えが返ってくる社員が多い企業は教訓抽出力が高いはずです。

 この2つは学びの基礎です。「3.反復」と「4.原則」でさらに次元の高い学習能力の差につながります。学習には反復・訓練が必要ですが、自分の職務経験の中で自然に反復でき身につけやすい能力と、意識して反復の場を設けないと身につけない能力があります。どこに反復の機会があるかを見つけて行動する応用学習力が「3.反復」には求められます。「4.原則」は反復の中で身につけた経験のエッセンスを言葉にまとめることです。いわゆる形式知化、ナレッジ化ですが、体験を言葉として抽象化すること自体、訓練が必要です。「3.反復」と「4.原則」まで来ると、学びの文化として企業間の差が大きくなると感じます。

 さて、ここまでは個人の学びで完結できますが、「5.共有」「6.伝承」「7.触発」は組織能力を高める学習性につながる原則です。他者の言葉から自己の行動を実際に変えていくのは非常に高度な学習性と言えるでしょう。学びの原則はシンプルですが、無意識でもこれが組織風土になっている企業はしなやかさに変革していく能力がかなり高いはずです。

発意・継続・伝播が行われているか

jmac_eyes_07_02p.jpg 2つ目のアプローチは、発意・継続・伝播のマネジメントです。人材マネジメントに関わる変革をご支援するときは、どんなテーマでもその根底に「iik=意を活かす経営(iは勇み立つ人、kは支え合う姿)」を据えています。このiikの要素が発意・継続・伝播なのです。

 「意」とは辞書的には「何かしたいと思うこと」ですが、その思いから行動することを「発意」と呼んでいます。発意の中には、意志・意味・意欲という3つの「意」が含まれます。抵抗にへこたれず、発意したことを結果につなげる、たゆまない「継続」が大事です。そして、発意・継続の物語を伝え広めるのが「伝播(でんぱ)」です。適切な伝播が行われている組織では、たとえば売上や利益という表層ではなく、結果がもたらす現在そして将来の「意味」に目を向けます。数字という結果ではなく、そのプロセスをレジェンド化(語り継ぐ伝説化)するのです。成功しても失敗しても、人の思いと行動面の価値を捉えて表現し伝播します。その影響でさらに発意の人が増え、後進に発意の文化が継承されるのです。変化対応力の高い組織には自ら発意する社員が多く、管理職も部下の発意と継続を支えています。発意が時や場所を超えて伝播する組織風土があるのです。

 たとえば重要な変革期にあってトップからビジョンが示されたとしましょう。しかし、ビジョンを描いたことのない社員は理解するのが難しいはずです。自らビジョンを描いたことがあるからこそ(たとえば自身の将来ビジョン)、その大切さも継続の難しさも実感でき、だからこそトップの革新のエネルギーも感受することができるのです。社員がビジョンを描くという仮定が実感しにくい場合は目標と言い換えてもいいでしょう。ただし、ここでの目標とは目標管理に見られがちな「強制された自主性に基づく形式的な方針展開目標」ではありません。方針を踏まえたとしても自分の頭で考え、実現したいという思いの強い目標です。自ら目標を立て、発意して動く社員が多く、しかもそれが組織文化になっていれば、厳しい環境下で変化対応を余儀なくされるような局面にあっても、変革を実現できるポテンシャルが十分あると言えます。あとはそのポテンシャルを引き出せばいいのです。

「発意」のメカニズムを動かす

 では、人はどのようなとき発意するのでしょうか? 発意のメカニズムをで表してみます。

jmac_eyes_07_02.png

 「ある状況や局面で、個人や職場や会社のポテンシャル(=潜在的な可能性)を理解し信じる気持ちがあり、そこに何らかのきっかけとしての出来事が作用し、ふっと意が生まれる」これが発意のメカニズムです。

 情報の多い社会では多くのきっかけ要素が存在しますが、自身のポテンシャルに気がつかないときっかけは何の変化にもつながらず素通りしていきます。逆に自己や職場や会社の多様な可能性に目覚めるほど、発意のきっかけが増えていきます。マネジメントにおいても、部下の多様な可能性に上司が気づかなければ、発意を促すきっかけを与えることはできません。トップ層も自社のポテンシャルを深く、深く信じ、適切なきっかけを与えなければ革新を促すことはできないのです。

 経営革新を支える人づくりでは、人材資産の拡充、人事制度改革、教育体系の再構築、配置・異動の最適化、グローバル人材育成、多様性マネジメントの進化、次世代リーダー育成、女性の活躍促進、シニア人材の活用......など多くの課題が山積しています。それぞれの課題解決、施策展開を仕掛けつつ、ときには根幹となる事柄、軸となる要素、すなわち「意」を起点としたアプローチに目を向けてみましょう。

 変化対応力を支える人づくりにつながる根幹とは何か?――その見極めこそ、人材戦略の急所と言えます。

コンサルタントプロフィール

掲載一覧

iik推進センター センター長 シニア・コンサルタント

伊藤 晃

1983年 株式会社日本能率協会(現 JMAC)入社。以来、業務改革の推進コンサルティングを中心に経験を積む。企業独自のコア・バリューと直結した「知恵と活力を高める」人材マネジメント革新を支援。“組織や制度を変えても人の意識・行動がプラスに変化しなければ革新ではない”という見方を重視し、組織学習体質を強化するためコンサルティングを展開、現在はiik「意を活かす経営」を提唱、その実現を支援。支援業界は自動車、運輸、繊維、製紙、製薬、精密機械、銀行、商社、不動産、生保、IT、電力、ガス、新聞、大学、流通、ホテル、テーマパーク、経済連など多岐にわたっている。コンサルティングの主要テーマは「iik 「意を活かす経営」の推進支援」「人づくり戦略立案、実行支援」「人材マネジメント諸制度改革と運用支援」「ニューコア人材、次世代リーダー育成」。主な著書に『キヤノンの人事革新がすごい!』(あさ出版)、『人と組織の持続的成長を実現する成果主義の新展開』(共著・JMAM)など。

関連リンク

最新の記事


JMACへのお問い合わせ