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日本的人材マネジメント(HRM)の変革期に求められる「脱・年功」

待ったなしとなった本格的なHRM改革

jmaceyes_03_01p.jpg 日本企業の人材マネジメント(HRM)は、戦後の歴史だけをたどっても大きな変革期を何度か経ています。最近では世界金融危機以降に急速に進んだ新興国を中心とするグローバル化と、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、それにバブル世代の高齢化が、いよいよ現実になろうとしています。こうした中で、人件費改革が大きな要素となってきています。
 一方でHRMの領域ではいつも"キャッチー"な言葉がつくられて、さまざまな課題の解決に向けた新しい概念やノウハウが登場してきました。それらに踊らされずに本質的な思考を維持するだけでも、人事の専門家にとってたいへんなことかもしれません。

 たとえばダイバーシティ(Diversity:多様性)。これはずいぶんと言いつくされて、かなり定着してきたかのように思いますが、その中身はどうでしょうか。実際には外国人や女性、高齢者、障がい者といった、いわば従来の企業におけるマイノリティが活躍できるようにするための個別の方針・人事施策を取り上げることが多く、その根底にある〈本質的な課題〉にまで踏み込んだ説明がないように思います。少なくとも表向きにはあまり見られません。
 多様な人材とは言い換えれば異質な人材ということです。たとえば同郷の人とそうでない人とでは、アフターファイブで盛り上がる話題が違ったり、言葉遣いも変わったりすることがありますよね。性別、年齢、出身学校などなど、人の属性は数多く、その多様性も幅広いため、日常では無意識で相手に応じたコミュニケーション行っているのです。

 企業経営となれば、このような多様な人材が可能な限り効率的に働いて、万国共通のモノサシである"業績"を高め、さらには企業のそもそもの目的である企業理念の実現に向けて歩み続けることが求められます。人材の多様性と業績との関連性は、さまざまなかたちで言われていますが、多様な人材が活躍するためには、これまでの日本的なやり方を見直すことも視野に入れるなければなりません。その大きなポイントの1つは、「脱・年功」です。たしかに、これまでさまざまな試行錯誤を繰り返しながら人事改革を進めてきて、"年功"の色合いを弱めてきた企業も多くなっていますが、いまだに"年功"を捨てきれない企業も多いようです。しかし、多様で異質な人材で業績を上げ続けるという〈本質的な課題〉をクリアするためには、「脱・年功」が不可欠になってくると思います。

改めてグローバル化を考える

 グローバル化の例で考えてみましょうか。いまさら改めて言うでもなく、近年のグローバル化は多くの日本企業で大きな課題になっています。日本能率協会(JMA)の調査などでも2010年頃にはHRMの最重要課題の1つとして注目されるようになりました。海外での採用や報酬、評価と人材育成など、HRMのありとあらゆる分野でグローバル化に伴う課題が認識されるようになったのです。こうした課題に対処するうえで「日本企業に特徴的なHRMをどう進化させていくのか?」という論点があったと考えています。

 日本企業に特徴的なHRMの例として、「人材を新卒から採用して、長期勤続の中で時間をかけながら育てていく」などがよく言われますが、とくに高い経済成長の下にある新興国の人材(少なくとも比較的若手の人材)は、複数の会社でのキャリア形成をまったく躊躇(ちゅうちょ)しない傾向が見られます。このような人材が多い労働市場では、人材フローマネジメント(社内外の人材の流れのマネジメント)も、日本のように長期雇用を主体とすることは難しくなるので、アメリカで典型的に見られるように人材の入れ替えを前提としたマネジメントの方が適合しやすいでしょう。一般的な日本企業にとっては、ここが悩みどころになっているのです。「個人の守備範囲(職務内容)を明確にして人材の流動化に耐えられるマネジメントのあり方を考えなければ......」「社内の人材育成の投資対象をどの範囲にどの程度行うべきか? 日本でのやり方とは異なる考え方や施策を検討しなければ......」などの悩みをよく伺います。

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多様な人材が活躍できるような変革こそが求められる

jmaceyes_03_02p.jpg 多くの企業にとって、今後の人件費が過大になると想定されるバブル世代社員の人件費コントロールが重要になることは確実でしょう。私自身も1992年に大学を卒業・就職した最後のバブル世代なので、複雑な思いはありますが企業経営の健全性のためには避けては通れないものと考えています。
 20年ほど前のバブル崩壊後、経営環境が激変した中で人件費の構造改革が強く求められ、人事制度のパターンの1つとして役割主義が流行しました。役割主義とは、HRMの基準(基本的な考え方)としてよく対比される"人基準(能力基準)"と"仕事基準(職務基準)"の折衷的な概念で、どちらかと言えば仕事基準を強調しようとしたものです。悪く言えば日本的なあいまいさを残した考え方でした。そのせいでしょうか、役割の大きさそのものを人事制度の中核に据えて属人的な要素を抑制しようとした改革が、結局は徹底されなかった企業も多かったのです。良くも悪くも従来からの年功的な要素をある程度温存してしまったのではないかと考えています。
 もちろん、年功的な処遇の傾向は、決して日本企業だけの特徴ではありません。人は経験を積むほど(≒勤続や年齢が高まるほど)能力が高まるという普遍的な傾向があるからです。とはいえ、このことを大前提にしてしまうと、やはり個々の人材の能力や成果を公正に見極めて処遇をするという基本があいまいになりがちです。
 高齢者の雇用拡大も要請される中で、企業は適切な人件費のコントロールがますます必要になっています。明確な方針に基づかない年功的なHRMは、今後は機能しなくなっていくでしょう。あいまいさを残してはいけません。

 先に触れたグローバル化の流れはもとより、生産年齢人口の減少も無視できません。ずいぶん前から言われ続けている女性の活躍も改めて重要な課題となっています。こうした状況下で本格的なダイバーシティが待ったなしで求められていることを強く感じています。
 多様な人材の活躍を促すダイバーシティ。もう10年以上も掲げられているスローガンですが、ダイバーシティを実現するカギは、突き詰めれば"明確なモノサシ"なのです。モノサシとは、たとえば具体的な仕事の内容や昇進昇格の判断基準などのことです。人事評価や賃金の決定基準といったHRMに限った話ではなく、そもそも「あなたは何をしなければならないのか?」が不明確であれば、仕事そのものがきちんと進まなくなるでしょう。たとえば海外現法でのマネジメント上の悩みのほとんどは、この不明確さに起因していると実感しています。

 日本的な"あうんの呼吸"は、価値観の違う人材同士では成り立ちにくいのです。"あうん"を支える人材の同質性は、ダイバーシティとは逆の方向に向かうことになります。それでも、人材の同質性を強みと明確に位置づけたマネジメントを志向する企業はあります。それを実現させるために一定の年功的な要素があってもいいという考え方については、一概に否定されるべきものではないでしょう。しかし、意思のない年功は、破綻する可能性がかなり高いです。
 多くの企業で年功的な処遇が改善されてきているとはいえ、まだまだ年功を引きずってしまって経営的な危機に陥るケースもあります。私自身の経験でも、年功処遇の結果、人件費の負担によって民事再生にまで至った大手のメーカーを支援したケースがあります。この会社では、過去30年以上にわたる意思のない成り行きのような年功処遇が行われていました。たとえば、賃金表の上限に達しても際限なく昇給を行っていたり、役職から外れても役職手当を付けたままにしていたり、といったさまざまな"優しい"対応がとられていましたが、結局は仕事による貢献度合いとのミスマッチがだんだんと大きくなり、恒常的な赤字に転落してしまいました。

 とにかく、もう年功的な処遇から本格的に脱却すべき時期に来た、というのが私の考えです。ダニエル・ピンク氏ではありませんが、「脱年功3.0」とでも呼びたくなる大きな変革期に突入したと言えます。
 ダイバーシティ自体は人間を尊重する非常に素晴らしい考え方です。それ自体が最終目的にもなり得るほどの価値があります。しかし、一方で人は"利(損得)"で動く側面があることもまた事実です。ダイバーシティだけをうたい文句にしても、実際はついてこない人材も一定の割合で存在します。ついてこない理由は、"利"にあるのでしょう。"利"をはっきり理解させるものは「脱・年功」とその先にある合理的に納得できる"モノサシ"ではないでしょうか。

 欧米流としてよく言われる「仕事基準のHRMが優位である」というのは短絡的な考え方です。本格的に年功からの脱却が求められている今、本質的に重要な要素は合理性、透明性などに基づいてモノサシを明確にすることです。これからの企業は、脱・年功による新たなHRMの価値基準を確立する必要があります。当然ながら、その価値基準は企業それぞれが重視する価値観に基づくものでなければなりません。

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コンサルタントプロフィール

掲載一覧

HRM革新センター センター長 チーフ・コンサルタント

齋藤 正宏

早稲田大学商学部卒業後、大手機械メーカーの人事部門で実務経験を積み、金融系および外資会計系コンサルティング・ファームを経て、2005年、JMAC入社。人事部門での実務経験をベースとして、数多くの人事革新コンサルティング実績企業を持つ。コンサルティングでは、クライアント企業との丁寧な対話を通じた制度のつくり込みを大事に。世間一般の流行や既成の仕組みの安易な導入ではなく、個々のクライアント企業の事業戦略・事業特性や組織文化を踏まえたベストな提案に取り組んでいる。主要コンサルティングテーマは「事業戦略や中期経営計画を踏まえた人事制度設計と運用・定着化」「合併に伴う人事制度革新およびマネジメント革新」「人事評価制度を核とした企業理念浸透施策構築」「グローバル人事制度・人材育成体制構築」「多様な人材の活躍を促すダイバーシティ・マネジメント革新」「組織改革」など。

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