第11回 単純なコストダウンの時代は終わった 企業価値を高めるロジスティクス機能の再構築

小澤 勇夫(おざわ いさお)チーフ・コンサルタント
コンサルティングにおいて、一貫して物流・ロジスティクス領域を専門に携わっている。中心領域は、ロジスティクス戦略視点からのビジョン設定・事業企画および、物流効率化視点からの拠点設計・在庫管理・荷役設計・生産管理などである。近年では、物流センター構想立案とセンター建設に対するコンストラクションマネジメントを手がけ、建設・運用費用の大幅なコストダウンを実現している。海外では、自動車のパーツ供給コンサルティングを欧州と北米でご支援している。

今こそ、再構築! ロジスティクスで物流を変える

徐々にあがる要求のハードル 物流に求められることとは

企業にとって、物流は必要不可欠な工程だ。90年代以降、多くの企業はこの工程をアウトソーシングすることでコストダウンを図ってきた。しかし、昨年後半から、この物流分野の再評価・再構築をしようという動きが加速している。「企業の置かれた経済環境の悪化に伴い、外部流出コストである“物流”のコストダウンを目指そうというわけです。けれども、ずっとアウトソーシングを行ってきたがゆえに、荷主である企業側には評価や改善、管理のノウハウが失われてしまったケースが非常に多いのです」長年この領域を専門とし、多くの案件を手がけてきたロジスティクス・ソリューション・センター長、小澤勇夫は現状をそう語る。
小澤は、こうした課題にロジスティクスの視点から物流改革を提案している。「経済の影響に加えて、ここ数年は製品のライフサイクルが短期化し、荷物を受け取るお客さまの要求レベルも高くなってきています。物流の各機能単体で最適化を図っても、企業として設定した目標を達成することは難しくなりました。単に梱包財のコストを抑えましょう、などということではなく、物流の各機能を連携させ、どうやって全体の最適化を目指せばいいのかを考える必要があるのです。ここに焦点を当てたのが、ロジスティクスという考え方ですね」小澤によれば、ロジスティクスの概念が注目されるようになってから20年ほどたつそうだ。つまり、企業にとって物流の業務改善は常に大きな課題であり、さまざまな物流機能の連携をし最適化を図るということは、簡単に解決はできない難問であったといえよう。

ブラックボックス化した物流ノウハウを取り戻す!

物流のアウトソーシング化は、企業に一定のコストダウン効果をもたらした。しかし、企業はそれによって別の課題に直面している。「たとえば、同業他社と比べてリードタイムを1日短くとか、小ロットでも提供できるといった物流での付加価値をつけて、事業そのものの競争力向上を目指したいと考えている企業があるとします。ところが、アウトソーサー側である物流業者にはこうした要求に応える体制がなかったり、頼みたい企業自身が内部の生産部門や営業部門とどう連携したらいいのかわからないといった現象が起きて困っているのです」この問題を解決するには、物流担当部門が原材料調達から製品の到着までの工程を管理する機能を取り戻し、どのような改善をすれば目標を達成できるのか、物流工程を再構築する必要がある。「アウトソーシングへのリクエストは複雑・高度化していく方向にあるにもかかわらず、物流業務が企業にとってブラックボックス化している現実に注目すべきでしょう。今回の不況で発生した自社内の余力を物流分野で活用しようと考える企業も少なくないため、この点は大きな課題といえます。もっとも、アウトソーシング自体は今後も進行していくと思いますが、すべてを任せるのではなく、業務の中身を見える形にする、見る機能を取り戻すことが重要なのです」単に製品を運ぶだけでは完結しない業務になりつつあり、今後、荷主と物流業者の関係も変化していくと小澤は考えている。
しかし、企業によってはもっと初期の段階で困惑しているケースもある。「JMACでは、こうした相談にも柔軟に対応しています。“ここに課題を感じている”など、その企業がある程度問題点を把握しているときには、解決できる個別のノウハウを提供します。ただ、どうにかしたいが、どこから手をつければいいかわからないというときには、問題点の切り分けから始めます」委託側として物流業者のプレゼンに同席し、評価・選定をするところからサポートすることも珍しくないそうだ。

荷主と物流業者双方にメリットを! 現場主義だからこその解決策

実際にJMACへの依頼主は、荷主である企業または物流業者のどちらかだが、いずれの場合でもコンサルティングそのものは2つの企業に行わなくてはならない。そこで効果を発揮するのが、“2つの企業双方の立場でコンサルティングができる”というJMACならではの対応力だ。JMACには製造業である荷主の業務改善と、物流業者の業務改善を同時に手がけるノウハウがある。「たとえば、物流業者だけにコストダウンを要求する方法では、それによる品質の低下など、長期的に見たときお客さまにとってマイナスになることもあります。どちらにとっても実現可能な改善案で、且つ最終的に企業目標を達成できるようにお手伝いしなくてはなりません」
JMACが物流業者側に、直接コンサルティングをすることがある。そのとき、徹底した現場主義によって信頼を勝ち得る場面も多い。それは単に現場に出向くといった性質のものではない。「トラックでの輸送実態を調べるときには、日報といった資料の数値だけで判断するようなことはありません。実際に配送トラックに同乗して実地で調査するという、身体を動かす現場主義がJMACの特徴ですね」現場を知ったうえで動くというJMACの姿勢は、これだけに留まらない。「荷主であるその企業が置かれている事業の環境、モノづくりの特性という実態に基づいて、どういうステップを踏んでいって最終的なゴールにたどり着けばいいのか、自らの手で現場での実践もしながら実際に業務を行う方々と共に確認します。どこかのNo.1企業が行っているという単なるベンチマークを導入するのではなく、その企業にとっての実現可能な“あるべき姿”を描くのです」JMACは、個々の特性を踏まえ現実を見据えたコンサルティングを行うのだ。

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