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堀 毅之
リーダーとして「チームづくり」を考えてみよう

第6回 影響の出方に意識を向ける

 社外のセミナーやカンファレンスなどに参加し、人材育成、組織開発の潮流や関心事などを捉えるようにしている。以前、あるカンファレンスに参加した際に、「ユマニチュード(Humanitude)」に関する話題があがり、興味を惹かれたのでいくつか書籍を手に取った。ユマニチュードとはフランスのイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏が提唱する認知症患者に対するケア技法である。知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいているという特徴がある。過去にNHKで取り上げられたので、耳にした方もいるのではないか。患者の変化の大きさを目のあたりにすると、まるで魔法のようだとの印象を与えるようだが、明確な哲学と実践技法をもとに行われているものである。そのようなユマニチュードに関する書籍を読みながら、人の意識や行動に変化を促すという観点から私は2つのことに考えが及んだ。

見る、話す、触れる、立つことで、相手にどのような影響を与えるか

 1つは関係のつくり方が相手に及ぼす影響である。

 ユマニチュードでは見る、話す、触れる、立つことが技法の柱になっている。相手の状態レベル(人間としての機能の回復、維持、寄り添う)に応じて適切に関わることを前提とする。そのときには相手の(問題)症状への対応だけでなく、ひとりの人として見て対応することを求めている。

 われわれがビジネスを行う職場のことを考えると、もちろん目標達成やお客さま満足に対する意識が薄い「ぬるま湯状態」の職場では困るが、かといってリーダーが問題解決だけに熱心になるのもうまくいかない。ユマニチュードの技法は、リーダーが組織・チームのメンバーの状態に関心を向け、適切なエンパワー(力づけ)していくことにつながると感じた。

 また、ユマニチュードの対応で私がとくに印象的に感じたのは、看護師が患者とコミュニケーションを図ろうとしても相手が認知症ゆえに反応が得られないときの対応である。反応が得られないコミュニケーションは正直、めげる。コミュニケーションをとる意味を見出しにくくなり、作業のみを処理して済まそうとしてしまうかもしれない。そのような状況に対して、ユマニチュードではオートフィードバックと呼ばれる技法により、看護師自身が自分を力づけして、めげずに続けるコツを推奨する。

 他にも自分から相手の視界を入っていき、相手の視線をつかんでいくように動くことで反応を得るなどの工夫もある。こういった姿勢や行動はビジネスを行う職場に置き換えてみても、たとえば世代間の違う部下への対応など考えるきっかけとして参考になると感じた。相手が受け取りやすく、対話しやすい状態づくりを心がけることが信頼関係を構築・発展させるための礎になる。

 余談であるが、今後、技術の進展により職場や家庭において支援ロボットが日常的に身近になったとしても、大切な要素として求められ続けるのであろう。

マネジメントの「意味づけ」を考えてみる

 2つ目は、マネジメントがチームやメンバーに与える意味づけの影響である。

 ジネスト氏は「従来、時間どおりに業務を完了させられる人が優秀な人であったが、今、その文化が完全に変わろうとしている」「本来のゴールは相手の不安を取り除くことができること」という。

 認知症の看護の職場とは異なっても、われわれの職場ではどのようなメッセージが発せられ、受け取られているだろうか。また、どのようなメジャーで計られ、評価されているだろうか。これらから自分たちの業務、役割に対して、われわれがどのような意味づけを行っているのかを考えてみるのも大切ではないだろうか。

 コンサルティングで訪問する支援先の管理職の方と話をすると、「最近入社してくる若手は自社の製品やサービスへの関心が薄い人が多い......」と嘆き節を聞くことが少なくない。ミレニアルズと呼ばれる西暦2000年以降に社会人になった人たちにとっては、そもそもモノやコトに対する関心、消費に対する考え方が異なることもあるのだろう。一方で、技術の進展や競争の激しいビジネス環境では短期間で成果を創出するマネジメントに軸足を置く職場も多いとは思う。そのときにはセールストークや提案・交渉力などスキル習得に留まらず、自分たちの職業や製品・サービスがお客さまにとってどのような価値や意味を持っていると考えるのか共有する機会が必要かもしれない。チームやメンバーの主体性の発揮を叫ぶ(願う)管理者は多いが、主体性を発揮するベクトルにも意識を向けたい。働き方改革の時代には自社としてどのような人材を育て、組織をつくっていきたいのか考えていくことが、これまで以上に求められているのではないだろうか。

 人材・組織の能力開発の世界では「アダプティブラーニング」といわれるように学習者個々人に最適な学び方、学ぶ環境を提供する方へ向かっている。リーダーには組織やチームのメンバーに対してどのように影響力を発揮すればよいのか、そのマネジメントの質がより一層期待されている。

【参考文献】
1)『ユマニチュード 認知症ケア最前線』(2014)NHK取材班、望月健(著) 角川oneテーマ21
2)『「ユマニチュード」という革命 なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか』(2016) イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ(著)、本田美和子(日本語監修) 誠文堂新光社

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コンサルタントプロフィール

堀 毅之

エンパワーソリューションセンター チーフ・コンサルタント

堀 毅之

2005年 JMAC入社。人材・組織開発領域におけるコンサルティング活動に従事。リーダーシップ発揮、チーム力向上、チームコミュニケーション強化を主要テーマに人・組織が生き生きと活動しながら継続的な成果創出を目指す行動づくりを支援している。共著に『「部下」と「チーム」がどんどん動き出す! 人を伸ばす「聴く力」』(日本能率協会マネジメントセンター)、『合意と行動を引き出す会議活用術』(商工ジャーナル)ならびに論文に『メンバーの力を引き出しチーム力を高めるマネジメント手法~“動けない”を“動ける”にする』(第66回全国能率大会)がある。


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