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星野 誠
技術者の知的生産性向上と職場活性化の現実

第8回 技術部門の働き方改革

 本コラムでは、技術部門の職場の現実を直視しながら「技術者の知的生産性向上と職場活性化」を考えていきます。「慢性的に忙しく元気がない」職場を真に活性化するためのヒントを提案していきたいと思います。第8回目は、技術部門の働き方改革について考えてみたいと思います。

働き方改革って言うけれど......

 先日ある試験部門の若手技術者から「まだ性能試験が終わっておらず、キリが悪いのに帰るのはストレスです」との声を聞きました。ある設計部門のグループリーダーからは「目の前で品質不具合が起きているのに、帰れと言われても帰れないですよ」との嘆き。また、ちょうどプロジェクトの山場を迎えている開発部門に伺った際に、会議室の壁に大きく貼られた「働き方改革!会議効率化、時間削減」のポスターについてメンバーに問いかけてみると、「あぁー、貼ってあることも気づきませんでした」という状況でした。

 今や働き方改革は避けて通れない改革ですが、全社としての施策展開が先行し「休み方改革」「帰り方改革」の側面が強まっているようにも見えます。もちろん、もともと帰らない、帰りにくい、休まないような風土が染み付いた職場に対しては、強制的に休息をとらせ、働き方を見直す入口としては有効だと思います。

 しかし、技術部門においては、もともと専門性が高い技術を扱い、何度も試行錯誤を繰り返しながら創造性を発揮することが求められるという業務品質と、そのアウトプットとしての製品品質そのものが業務負荷を生み出しています。人の時間効率的な働き方だけをねらっても、本質的な解決にはまったくつながらないでしょう。

 むしろ「帰れ、帰れと言われるので、十分に質の高い仕事ができません」といった状況に陥り、トータルとしての知的生産性を低下させる変な方向にもつながりかねないのです。

コントロール問題ではなくマネジメント問題

 技術部門の働き方改革は、技術課題の解決力向上、目標完遂力の向上につながる方向を目指すべきです。従来から取り組んできている開発品質向上、開発プロセス改革、技術伝承/技術力アップなどの取組みとは切り離せないからです。

 結果としての残業や休出を管理する、管理されるのではなく、能動的に自職場のマネジメント課題として捉え、質を上げていく取組みが求められています。

 質を上げていくためには、アウトプット側に目を向けた発想が必要となります。

 たとえば、

  • 会議も単純に時間を削減するのではなく、むしろ、しっかりと納得するまで議論をして方針や打ち手を明確にし、結果として不要な事後の手戻りを減らす
  • 優秀なチームリーダーが一人で業務計画を作成し、個々メンバーに割り振るのではなく、チーム全体で計画を作成、共有し、全員で事前に問題を発見する
  • 個人分担をきっちりと決めるのではなく、あえてチーム内で分担の重複部分をつくり、経験と知恵を集めて早期の課題解決を図る
  • 中期的な視点からは、育成や技術伝承のための具体的なスキル向上計画を見えるようにし、日常業務に織り込み、組織的な技術力強化を図る
  • 日々のタスク処理のスケジュールを立てるだけではなく、多くの試行錯誤を必要とする技術課題に対して複数のオプションを考えた解決作戦を計画する

といった取組みです。

 一見、業務時間が増え、非効率に見えるようなことについても、全体の視野、中期的な視野、事前化の視野、基盤強化的な視野から、「あえて」「むしろ」「加えて」をどれだけ組み込めるかが日常マネジメントのしどころなのです。

働き方改革の単位は人ではなく職場

 「上司が遅くまで残っていると帰りづらい」という話は昔からよくある話ですが、上司も意地悪で帰らないのではなく、突発で起きた品質不具合の対応会議があるので、すぐに帰れない上司もいます。

 「残業をするな」と定時になったら声を掛けている上司自身が夜遅くまで残っていることがありますが、その原因は自分の働き方うんぬんではなく、配下のチームが事前に見つけられなかった事後発生の品質問題への対応なのです。

 技術伝承が思いどおりに進まず、実務をたくさん抱えてしまっているチームリーダー。

 技術が人につき、業務負荷が偏っても仕事が分担できず、帰れない担当者。

 隣に座っている仲間を助けたくても、仕事の中身がわからないので、具体的な協力もできない個人商店化したチーム。

 ......。

 日常業務の実態は職場単位であり、働き方は誰かだけが変わるのではなく、職場単位で変えていく必要があります。また、とくに日本の職場の多くは、個人ではなく職場の風土やチームの連帯感の中で、上司や同僚の影響も受けながら個々人の働き方が決まってくる心理的な側面もあります。そうした職場では、形式的なジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を超えたところの職場の風土を変えていくことも求められています。

働き型を"チーム"に変える

 職場の風土とは、日常のチームの仕事のやり方がつくり出すものです。職場の風土を変えるためには、まずはチームで自分たちの仕事のやり方(働き方)を見つめなおし、日常業務遂行の"型"(働き型)を変えていくことが有効です。

 忙しい技術部門ほど目先のやることだけに目が行きがちであり、良くも悪くも同じやり方を繰り返していることがあります。あえて一歩立ち止まり、その働き型を"チーム"に変えてみるマネジメントをお奨めします。すなわち、個々人の「働き方」を見直すだけでなく、「働き型」をチームで実践できるように変えていくのです。

 継続的な要求品質の高まり、複雑な分業、効率化一辺倒の業務環境の中で、本来持つ職場の能力や強みが発揮できず、本来の技術者の"働き"が失われてしまってはいないでしょうか。技術者一人ひとりと職場が持つ本来の能力を呼び起こす働き方改革を実現していただきたいと思います。

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コンサルタントプロフィール

星野 誠

KIセンター チーフ・コンサルタント

星野 誠

技術者や事業スタッフの知的生産性向上と職場活性化を専門としている。知的生産性を妨げるさまざまな問題が絡み合う職場に飛び込み、日常業務の仕事のやり方を具体的に変えていくコンサルティングを実践。300チーム以上の職場変革支援の経験から、やらされ感でなく自分たちで自立して変革を進めるための考え方と実践手法を日々研究している。とくに輸送機器業界や精密機器業界など製造業の開発設計/技術部門における変革活動の支援経験多数。


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