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今井 一義
企業的農業経営が「魅力ある農業」を実現する

第6回 経営資源の活用度を見える化して全体最適へ

 企業的農業経営を志向し経営規模が拡大すると、売上が増加し利益も増えるのでは? と考えがちである。しかし、実際には想定していたほど利益が増加せず、気がついたら赤字になっているケースが多い。日本能率協会コンサルティング(JMAC)が経営支援する生産者も、規模拡大によるメリットが思ったほどない、という課題を認識してコンサルティング支援を求めてくるケースが多い。

 一番の要因は、経営規模拡大に伴い経営資源が増加し、その資源を有効活用できていないことである。経営資源はいろいろあるが、収益上大きく影響するのが圃場、農業機械、加工設備、従業員、保管倉庫などであろう。これらの経営資源を購入し、借用したり雇用したりして経営をしているが、きちんとマネジメントできている農業経営者は少ない。家族的農業経営から企業的農業経営に移行し、マネジメント対象や範囲が拡大し、経営者が適正に判断できない状況が発生していることが多いのである。経営資源の活用度を見える化し、全体最適を志向して活用することが、農業経営の収益向上を実現する近道である。

農業の仕事量は変動する

 農業は、栽培工程ごとに仕事量が変動する。播種・定植や収穫の時期は、仕事量が多い繁忙期で人手が不足する一方、栽培管理などの閑散期の仕事量は少ない。繁忙期の仕事量に合わせて、作業者や農業機械を保有するとその固定費が負担となり収益性を低下させることになる。

 農業経営者は、繁忙期が異なる作物を生産したり、同じ作物でも作付けするタイミングを変えたりすることで、仕事量の平準化を図り、経営資源を有効活用しようと工夫している。しかしながら、天候など環境変化により予定していた仕事が前後にずれるリスクや繁忙期の忙しさなどを考慮して、作付け量を減らすケースもあり、十分に経営資源を活用できていないことが多い。

マネジメントの基本は見える化

 農業は変動する仕事量に対応して、適切な経営資源を配分することが難しい産業である。経営資源を過大に保有すると固定費が収益を圧迫することになるし、経営資源の能力を考慮して安易に作付けを減らして調整すると、売上高減少で収益性が低下することになる。

 では、どのように経営をマネジメントすべきか?

 まず経営資源能力に対して仕事量がどれだけあるか、毎月・毎週・毎日の活用度を見える化することが重要となる。経営資源の活用度を事前に算出し、能力の過不足を把握することで、正しい経営判断で対応することが可能になる。

 たとえば、能力過多の場合は、繁忙期が異なる作物を追加生産することで売上高を増やすことができるし、能力不足の場合は、作付けタイミングを変える、栽培方法を変える、などさまざまな視点から対応することで、経営資源を追加投入せずに売上高を維持することが可能になる。

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農業において先読みする意義とは

 農業では天候や土壌・害虫などの環境要因による影響を受けることが多いため、作付け計画段階で収穫までの仕事量を把握することに意味があるのだろうか? という議論になることがある。せっかく計画しても、天候で作業タイミングがずれたり、害虫が発生し仕事が増えたり、予定変更が常である。変更になるのであれば、計画段階で仕事量を把握する必要はないのだろうか?

 答えは、その逆である。変更が想定されるからこそ、事前に仕事量を把握し、「経営資源の過不足がないか?」を確認し対応することが重要となる。事前に仕事量を把握することで、「いつごろ経営資源が不足するか?」を認識できれば、事前にその対応が可能となり、より効果的で効率的な経営を実現できる。

 ここで北海道の大規模生産者でのコンサルティング事例を紹介する。毎年1月の作付け計画段階で、作物の作付け日、作付け量、栽培方法を決定し、週次の仕事量(作業者、オペレーター、農業機械、農業設備)を算出し、役員とコンサルティングメンバーで事前に課題を把握し、解決策を検討して実施した。

 1つ目の課題として、播種前の圃場整備でトラクターの能力が不足することを把握し、残業と耕起作業の前倒し着手により、播種日を変更せずに作付け計画を策定できた。

 2つ目の課題として、収穫時の仕事量が多く収穫作業が間に合わないことが想定されたため、早い段階からアルバイトを募集して対応することにした。また、アルバイトが入っても効率的に作業できるように作業標準書を整備して指導した。

 3つ目の課題として、閑散期に作業者とトラクターの能力に余裕があることを把握した。作業者は閑散期の空き時間を活用して、前年収量が少なかった圃場の草刈作業をしてさらなる収量アップを図ったり、収穫作業で使用する資材の事前準備化を図ったりして繁忙期の仕事量を削減した。

 本事例のように、事前に仕事量と経営資源能力の活用度を先読みし、課題解決策を検討・実行することができれば、経営資源を有効活用して収益向上を図ることが可能になる。また、仕事量を先読みすることは、環境変化により仕事のタイミングや仕事量が変動した場合に、どの程度の影響度があるのかを把握し、変動による課題に対して迅速に対応できるのである。

全体最適を追求して収益向上

 農業の収益向上を図るには、繁忙期や閑散期の一時期の仕事量や経営資源配分を考慮するのではなく、全体最適を志向する必要がある。

 そのためには、 ①仕事量を先読みして課題を事前に把握し対応策を検討する
②対応策は「作付けタイミングや作付け量・作付け品種・栽培方法を変えるか?」「経営資源の能力を変えるか?」などさまざまな観点から検討し、収益性と環境変化リスク対応可能性を評価して実施する
ことが重要になる。

 仕事量を先読みするためには、まず過去データを分析し、栽培パターン別、栽培工程別に単位当たり仕事量と栽培プロセス別の所要期間を設定する。次に作付け品種、作付け日、作付け面積、作付け圃場、栽培パターンを決定することで、簡単に仕事量をシミュレーションできる仕組みを構築する。複数の対応案を検討し、仕事量をシミュレーションしながら全体最適になる案を選択することが成功のポイントとなる。

所有から利用へ

 経営資源を全体最適視点でマネジメントしても、すべての経営資源(作業者・農業機械・倉庫・圃場など)を同じ能力(仕事量への対応度)で保有することは難しい。とくに高額な農業機械を購入すれば、必然的に能力は高まり、高い能力に対する仕事量を確保できないと活用度は低下することになり、結果として機械の減価償却費が収益性低下の要因となる。

 製造業でも受注生産の場合、仕事量の季節変動が発生し対応に苦慮している。そのため製造業では、安定している仕事量を見極めて経営資源を保有し、変動に対しては作業者であれば派遣社員を利用し、加工機械能力が不足する場合は外注事業者を利用することで対応している。

 農業においても近年、高額な農業機械(コンバインなど)のシェアリングサービス(繁忙期が異なる作物やエリアの生産者が農業機械を共同利用)や栽培工程の作業一式を受託するコントラクターサービスが普及し始めている。事業規模拡大の過程で経営資源の増加も必要となるが、経営資源を所有するリスクを利用で補完することは、収益向上を図るうえで重要な要素となる。そのためにも仕事量を先読みし、経営資源の活用度を見える化して、どのくらいの経営資源をどんな手段で調達するのか(所有するのか利用するのか)、どこに配分するのかをマネジメントすることが重要となる。

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コンサルタントプロフィール

今井 一義

プロダクションデザイン革新センター シニア・コンサルタント

今井 一義

2003年 JMAC入社。製造メーカーのコストダウン、製造現場の生産性向上、人材育成のコンサルティングの経験を活かし、農業経営の改革・改善に取り組んでいる。「企業的農業経営が『魅力ある農業』を実現する」を信念に、製造現場の改革・改善手法を農業分野に展開している。製造現場でのノウハウを活用し、現場の効率化によるトータルコストダウンに加え、栽培~加工~販売のフードチェーン全体の最適化を中心に活動。現在、九州農業成長産業化連携協議会 企画委員 IT部会長として、農業経営改革を推進している。


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