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今井 一義
企業的農業経営が「魅力ある農業」を実現する

第5回 綿密な計画で情報・モノ・作業を清流化

 企業的農業経営を推進すると、経営者一人では何をするにも思いどおりにならないことが多い。経営規模が拡大する中で、経営者がすべてのことを指示して、うまく業務が回ればよいが実際には困難なことが多い。経営者が判断して指示するための情報が不足しているため、正しい判断ができなくなることが増えるからである。圃場が増え、従業員が増え、農業機械が増え、作物品種が増え、一次加工や出荷業務など工程が増え、判断するための情報の種類や量が拡大することを考えると、きちんとしたマネジメントの仕組みを構築する必要がある。

 JMACが農業経営の現場で課題解決するコンサルティングテーマで多いのが、「情報やモノの流れの清流化」である。経営のPDCAサイクルが回っていないため、必要なときに経営資源が不足したり、逆に余剰な経営資源をムダにしたりすることが多く、現場は混乱し収益が悪化しているケースが多い。必要な正しい情報を経営者が把握していない、経営者に届いていない、などで的確な指示を出せないために現場の至るところにムダが発生している。必要な情報が現場に滞留することで、経営資源である人や農業機械の操業度が低下したり、経営資源の不足で作業(収穫など)が遅れ、モノが次工程に流れなくなったりする(滞留する)ために、従業員が手待ちになる、作業の適期を逃している、収穫しても出荷できずに廃棄ロスになるケースが多い。

清流化の鍵は計画

 モノや作業を清流化するためには、正しい情報に基づく計画が重要である。良い計画を策定できると、PDCAサイクルをきちんと回すことが可能になる。計画を作成することで、事前に問題を把握し問題解決することもできる。

 しかし良い計画がないと、経営者は実施するうえで何をもとに指示すればいいのか、わからなくなる。作業者も、いつまでに、どこまでやればよいのかが見えず、作業ペースや優先順位も不明確で作業効率も悪化する。また、前後の工程の連携が取れた計画になっていないと、作業タイミングがずれて手待ちになったり、仕掛り在庫が積み上がり面積不足や廃棄ロスの増加になったりする。

 良い計画とは、「いつ・どこで・誰が・何をするのか」が明確になっていて、正しい判断や指示をできる状態をつくることである。その判断をするためには正しい情報が必要となる。正しい情報とは、判断するために必要な項目が明確になっていて、適度な精度で定量的または定性的なデータ・情報のことで、それらは適切なタイミングで共有化されなければならない。

必要な情報を定義する

 では、良い計画をつくるうえで必要な情報とは何だろうか?

 出荷予定(品種・数量)、作物の栽培・加工プロセスや作業、その作業の標準時間(単位当時間)、作物の栽培状況や加工工程の進捗状況(作物品質と歩留りなど)、各工程の保有能力(時間当たりの出来高や台数・人員)、各工程間の仕掛り保管能力、必要な資材・機材・備品の必要量、などが考えられる(下表)。

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タイムリーな情報でムダをなくす

 また、何の情報を、いつの時点で、どの精度で把握し、どのように共有するかを決めておくことが重要となる。時々刻々と変化する状況において、各工程で把握した情報のタイミングがずれると、誤った情報を伝えることになり、結果として、作業しようと思ったら作物が不足したり、資材が不足したりするといった事態が発生し、作業できずに従業員が手待ちになることもある。また、仕掛り在庫を保有する面積が不足すると余分な移動が発生し、運搬のムダや在庫管理のムダが発生したりする。もっとも大きな問題は、栽培〜収穫作業の適期を逃すことである。

 たとえば、加工・出荷工程がネックで、加工・出荷対応が間に合わずに収穫作業を延期する場合でも、作物の成長は止まらない。結果、収穫適期を逃して作物品質が劣化し、その選別で時間がかかり、さらに加工出荷作業に遅れが生じるケースがある。これまで一生懸命、時間と手間とコストをかけて栽培してきた作物が収穫できず廃棄ロスになることは、収益面においても従業員のモチベーション面においても重要な問題となる。

 このような問題を防止するためにも、マネジメントの仕組みを構築し、栽培〜加工・出荷〜販売に携わる人が、同じ情報を適切なタイミングで共有し、一貫した計画情報をもとに業務を遂行できて、かつ問題があれば各部門が連動した修正計画で業務遂行できるシステムが必要なる。

情報の清流化が作業を効率化する

 家族的農業経営であれば経営者の目は全体に行き届き、また経営者が見逃している問題点を家族が指摘することで、問題が大きくなる前に解決できることもある。しかし、企業的経営を志向し規模が拡大していくと、当たり前の報告や、言わなくても準備するだろう・やってくれるだろうと思っていることが実際にはできていないために、大きな問題につながってしまうケースが多い。

 これは、マネジメントの仕組みを構築していないことが原因である。社員の怠慢というより、経営者の甘えが引き起こしている問題である。

 必要な情報の流れを整理し、マネジメントの仕組みとして、「何の情報を」「いつまでに」「誰が」「誰に」「どのような方法で」で伝えるか?

 その情報をもとに「誰が」「何を判断基準に」判断し、「誰に」「どのような」指示を出し、作業・業務を遂行するか?

 をきちんと構築することが重要となる。

 マネジメントの仕組みを構築し機能させることで、情報が各工程間や経営者、管理者、従業員にスムーズに流れ、作物も淀みなく工程間を流れ、作業のムダも低減され、作業効率化につながるのである。綿密な計画を作成して情報の清流化を実現し、モノが各工程を滞留することなくスムーズに流れ、従業員もロスなく作業できる環境をつくることは農業経営者が解決すべき重要な課題の1つである。

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コンサルタントプロフィール

今井 一義

プロダクションデザイン革新センター シニア・コンサルタント

今井 一義

2003年 JMAC入社。製造メーカーのコストダウン、製造現場の生産性向上、人材育成のコンサルティングの経験を活かし、農業経営の改革・改善に取り組んでいる。「企業的農業経営が『魅力ある農業』を実現する」を信念に、製造現場の改革・改善手法を農業分野に展開している。製造現場でのノウハウを活用し、現場の効率化によるトータルコストダウンに加え、栽培~加工~販売のフードチェーン全体の最適化を中心に活動。現在、九州農業成長産業化連携協議会 企画委員 IT部会長として、農業経営改革を推進している。


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