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伊藤 冬樹
第一線の組織マネジメントを考察する

第10回 現実を直視し、先手を打つ

 これまでのコラムは管理職のみなさん自身に期待する物事の捉え方、考え方、行動を紹介してきました。今回から数回にわたって、現場第一線の担当層の人々が実践すべき姿を紹介します。ただし、これらの行動は同時に管理職のみなさんにとっても意味のある行動だと思いますので、両方の視点を持ちながら読んでいただければと思います。

 今回は"先手を打つ"というキーワードを紹介します。このキーワードには大きく2つの面からの意味づけができます。

 1つ目は、すでに"見えている問題や課題"に対する取組みで、たとえばお客様からのクレーム対応がそれに当たります。

 2つ目は、今は未だ顕在化していないけれど、このまま推移すると発生が予想される問題や課題に対する取組みで、これらの問題・課題はみなさん自身の意志によって初めて検討の対象となる、言わば"設定する問題・課題"です。たとえば「高齢化社会に備えたシニア社員の戦力化施策の検討」といった課題です。

 これら2つの問題・課題は現象的に重複する場合もありますが、意味合いが異なりますので、2つの切り口として捉えていただければと思います。

見えている問題・課題に"先手"を打つには

 まず初めに、見えている問題・課題に対する"先手"について触れたいと思います。

 前回の「分かち合い」でも触れましたが、職場の問題・課題はなんとなく気になっていても目を背けてしまいがちなものです。職場で発生し解決が求められる問題に対しては、誰もがネガティブな意識を抱きます----「問題は楽しくない。見たくない。認めたくない。考えたくない......」。また、新たな取組みが求められている課題に対しても、まずは"抵抗感"から入ります----「何で自分が。面倒くさい。失敗したらどうしよう......」。こうした否定的意識が現実から目を背けさせてしまうのです。

(以降、解決すべき"問題"と実現すべき"課題"を並列させると文章がくどくなるので、ここでは問題のみに対する説明で話を進めます。本文中の"問題"という言葉には、課題の意味も含まれていると捉えてください)

 しかしながら、こういった問題はまったく無視することもできず、"のどに刺さった小骨"のようにずっと気になっているので、心の中はずっとざわついていて気持ちが落ち着くことはありません。そして、結局は手を打つ羽目になるのですが問題は放置されてきたので、深刻化したり、こじれてしまったりしていることが多く、解決の手間ひまもかかってしまいます。そのうえ解決の水準も低レベルに留まってしまうことも多く、問題が慢性病のように残り、後々まで悪影響を引きずってしまうこともあります。

 そこで再度"モノは捉えよう"の登場です。問題は発生するものと割り切り、問題を避けて通るのでなく問題を受け入れ、先手を打つのです。見たくない現実もきちんと直視します。すると問題は想像していたよりも小さく、これまでの不安感は幻想に踊らされていただけだったということもあります。また、現実を直視すると問題の状況が詳しく見えてくるので、打ち手のイメージにもつながりやすくなります。

 問題から目を背けようとすると、その問題だけでなく身の周りの状況全体からも目を背けがちになります。ところが先手を打って問題を解決すると、目の前がすっきりして他の問題・課題へも関心が向けられるようになり、さらなる先手を打てるようになります。

 現実に目を向けなくとも現実は変わりません。どちらが得か考えてみてはいかがでしょうか。

設定する問題・課題にこそ"先手"を打て!

 次に設定する問題に対する先手の効用について触れたいと思います。

 設定する問題は、たとえネガティブな内容であっても今の痛みとして表れているわけではないので、とりあえずやり過ごすことはできます。一方で、目先の仕事は、それだけで毎日が一杯一杯になってしまうボリュームです。したがって、設定する問題に対するネガティブな意識、つまり見て見ぬフリ、寝ている子は起こさないでおきたいという意識は、見えている問題より大きくなりがちです。少し落ち着いたら、設定する問題にも取り組もうと誰もが思うわけですが、いつになったら落ち着くのでしょう?

 結局は手付かずの状態のままで月日が経ってしまうというのがよくある"落ち"です。

 そこで設定する問題に対しても先手を打とうというのが2つ目のメッセージです。ここで設定する問題に対する先手の意味を明らかにするために、問題解決を顧客満足にたとえて考えてみます。「顧客満足とは顧客の事前期待よりも事後評価のほうが高いこと」と定義されていますが、これを問題解決に当てはめると「相手の要求する解決水準より高水準の解決を提供することで相手から認められる」と捉えられます。

 さて、この枠組みで先手を打つということを考えると、相手が要求水準を明確化する前、つまり要求水準がない(=ゼロ)状態での働きかけですので、ある意味どんな水準の働きかけであっても相手から評価される、ということになります(図1)。これが設定する問題に対する先手を取ることの最大のメリットです。また、先手を打つ側が主導権を握ったうえで積極的に推進することができるので、この点も先手を取ることの大きなメリットになります。日々多忙な中での取組みなので多少の無理くりは生じますが、これだけのメリットを受け入れない手はありません。

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 設定する問題はもしかしたら発生しないかもしれません。新たに手を打たなくとも何とかなるかもしれません。ところが世の中はそんなに自分たちの都合の良いように動いてはくれません。何もしないでいて事が起こってしまうと、手を打たなかったことを一生悔やみ続けることになります。一方で先手を打てば打っただけの成果は得られますし、仮にうまくいかなかったとしても実施した内容を振り返る(反省する)ことで、さまざまな教訓が得られます。

 やらなかった後悔とやったことの反省のどちらを選びますか? 時間軸は戻せません。どちらが得かよく考えてみてください。

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コンサルタントプロフィール

伊藤 冬樹

HRM革新センター チーフ・コンサルタント

伊藤 冬樹

1985年 JMAC入社。新事業開発を振り出しに、事業戦略立案、マーケティング領域の支援経験を経て、人材マネジメント領域のコンサルティング・教育を行っている。人材マネジメント領域においては、人事制度、人材育成体系、組織活性化などの仕組み構築のほかに、泥臭い第一線組織における組織マネジメントのあり方を深く研究・考察。そこから得た知見をもとに、現場における目標設定、コミュニケーション、業務改革、OJT、評価などの組織マネジメント運営支援を幅広く行う。人材マネジメントの立場からの企業・組織の業績貢献、改革推進でも大いに活躍している。


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