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伊藤 冬樹
第一線の組織マネジメントを考察する

第6回 目線を変える -やりくりのマネジメントの知恵-

 やりくりのマネジメントの知恵の最初として、管理者自身の目線に触れたいと思います。前回のコラムで紹介した"モノは捉えよう"を実践できるということは、複数の目線を持てることと言い換えることができます。

担当者目線と管理者目線の違いを知る

 目線とは物事を見る(捉える)際の立ち位置のことです。同じ富士山でも、静岡県側から眺めるのと山梨県側から眺めるのとでは見え方はまったく異なってきますし、麓から眺めるのと頂上から眺めるのと、さらには上空の飛行機の窓から眺めるのとでも、見え方が大きく変わってきます。これが目線の違いです。

 会社の中での立ち位置の違いは職種、拠点、階層などさまさまありますが、職場のマネジメントを考えるうえで重要となる目線は階層別の違いです。階層も細かく分けるとさまざまに区分されますが、大きく担当層、管理職、経営層の目線の違いが重要になっています。みなさんは、自らがベンチャー企業を立ち上げでもしない限り、最初の立場は担当層の立場となります。この目線を否定するわけではありませんが、組織マネジメントを推進する立場としては管理職の目線が求められています。

 これらの目線の例を図1に紹介します。この例では、その違いを際立たせるために、だいぶデフォルメした表現になっています。また業種・業務内容によっては、担当層でもこの図に記した管理職層の目線が当たり前、またその逆のケースもあるということをあらかじめ断っておきます。

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仕事の捉え方:業務の完遂 vs 業績の達成

 まずは、仕事の捉え方です。担当層は仕事をアクションとして捉えますが、組織マネジメントを行う管理職としては、仕事をビジネス(の一環)として捉えることが求められています。また、担当層は仕事・組織に対し受け身の意識になり、自分の役割をフォロワーとして認識しますが、管理職層は自分を組織のリーダーとして位置づけ、仕事・組織を仕切ることが求められています。こう捉えると、担当者層は担当する業務を完遂することをミッションと認識しますし、管理者層はその行動がどんな業績につながるかが関心の対象となります。

 この認識の違いが、組織、業務のさまざまな要素に対する捉え方の違いにつながっているようです。たとえば、担当者の関心は自分周りが中心になりがちですが、管理職は広く外に眼を向け他者への貢献に関心を持っています。お客様は管理者目線では、自社の製品、サービスにお金を払ってくれる"神様"ということになりますが、担当者目線ではいろいろ無理難題を押し付ける"対立者"と捉えられることもあります。

業務の捉え方:与えられるもの vs つくり出すもの

 業務の捉え方にも違いが出てきます。担当者目線では業務は与えられるものであり、それをいかに速く楽に片付けるかという捉え方をします。一方、管理職目線では業務とはつくり出すものであり、その付加価値をより高めることを考えています。部下の捉え方にも差が出ます。職場のメンバーとの関係でも担当目線で見ると、お互いうまくやろう、助け合おう、仲良くしようといった意識が働きますが、管理職は部下に対して、あえて嫌われ役となり苦言を呈することも避けてはならないのです。

 繰り返しますが、ここでは担当者目線が常に悪く、管理者目線が正しいと言っているわけではありません。担当の立場であれば、担当目線から物事に当たることで確実に業務は遂行されますし、生産性向上にもつながるのです。ただし、自分が管理職になった際には、この目線を持たないと役割を十分に発揮できないし、ミッションもクリアできないということになります。

現場を走り回るまじめな管理職は受け入れられない

 管理職になりたての人はこの目線の違いがわからないと、担当だったときと同様に現場を自らが動き回ってしまいます。その心理状態は次のとおりです。

 「(担当から見ると)何もしない管理職とは汗をかかない怠け者である。自分はそうはなりたくない。良い管理職とは率先して動く人である。昇格したのだから担当のとき以上に先頭に立って仕事をしなければならない」--このような行動は、几帳面でまじめな新任管理職によく見られますが、残念ながら現場で受け入れられずに空回りしてしまいます。管理職はあえて動かず、後方から自分が管理すべきフィールドの全体像を見渡し、必要な施策を企画してそれを展開することが求められているのです。担当層が忙し過ぎるからといって、管理職が一緒に動いてもその効果は限定的です。担当層が少しでも忙しさから開放される施策を考えて、実施することに自分の時間を割くことが管理職の役割なのです。

他人のために「一肌脱ぐ」ことで自分の目線を変えられる

 最後にどうしたら目線を変えられるのか、について話しておきます。まずは自分(担当者目線)と異なる目線があることに気づくことが必要条件ですが、これは外からの刺激(たとえばこのコラム)で認識することができます。異なる目線に気づいたら、自分の目線をどうすれば変えられるのでしょうか。ここからは外部からの働きかけ(期待の提示)だけでは成しえません。本人が自分なりに熟考して自分の意志で決める(変える)しかないのです。

 管理職になりたいという意志がある人ならば自ら目線を変えることはできると思います。一方で最近は管理職になることに消極的な人も少なくありません。こういった人のために少しでも「意志で決める」につながることを期待してキーワードを贈ります。そのキーワードは"貢献"です。貢献とは自分のためだけでなく、他人のため、組織のために行動しようという価値観です。もう少し言えば、心を広く持って他人のために"一肌脱ぐか"といった「割り切り」です。どうせ管理職にならざるを得ないのなら、嫌々務めるのでなく、前向きにその要請を受け入れようとする姿勢でいれば自分の目線も変わってくるはずです。

 次回は管理職目線を持ったみなさんに、もうひとつ意識してもらいたい"モノは捉えよう"をお伝えします。

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コンサルタントプロフィール

伊藤 冬樹

HRM革新センター チーフ・コンサルタント

伊藤 冬樹

1985年 JMAC入社。新事業開発を振り出しに、事業戦略立案、マーケティング領域の支援経験を経て、人材マネジメント領域のコンサルティング・教育を行っている。人材マネジメント領域においては、人事制度、人材育成体系、組織活性化などの仕組み構築のほかに、泥臭い第一線組織における組織マネジメントのあり方を深く研究・考察。そこから得た知見をもとに、現場における目標設定、コミュニケーション、業務改革、OJT、評価などの組織マネジメント運営支援を幅広く行う。人材マネジメントの立場からの企業・組織の業績貢献、改革推進でも大いに活躍している。


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