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山田 朗
今こそ環境経営の推進を

第15回 ISO14001:2015の活かし方:箇条ごとのポイント その1

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 第9回から13回はISO14001:2015を企業経営に役立てるための考え方を書きました。特に最も大きな改訂点である課題⇒リスク及び機会⇒目標という流れの中で、取り組むべき項目(リスク及び機会)を広く捉えることの重要性を述べてきました。
 今回はそれ以外の2015年版の改訂点に関連して、私がコンサルティングで意識しているISOの役立て方や活用のポイントの一部を箇条ごとに説明します。

箇条4 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

 組織が抱える外部・内部の課題や利害関係者のニーズを明確にしたら、それに基づき適用範囲を決定するという流れが2015年版の要求事項です。つまり、外部・内部の課題を展開するのにふさわしい適用範囲にすることが求められています。
 従来は運用のしやすさなどから工場単位、営業所単位、事業部単位などでEMSの適用範囲を決めていた場合も少なくありませんでした。今回の改訂において経営的な観点から課題を抽出した場合に、それを展開するのに工場単位などサイト単位で十分でしょうか?
 たとえば、このコラムの第11、12回で述べたような社会貢献しながら事業を拡大するような課題を設定した場合などは、経営企画、営業、開発、調達、製造など全社的な展開が必須になる場合が多々ありますよね。
 サイト毎だったEMSを全社統合に拡大する動きは、2005年くらいから環境先進企業を中心に一気に高まりました。私もこのころから数社で全社統合のご支援をさせていただきましたが、トップ方針の展開のしやすさ、環境マネジメント業務の効率化、情報の一元化、水平展開のやりやすさ、審査費用の削減などを理由に統合化に踏み切った企業が多かったですね。まだ全社統合のEMSになっていない組織は、本当に今の適用範囲での運用が最適かを再検討するいい機会になります。
 また、先のコラムに書いたように適用する対象を「環境」のみから「サステナビリティ(社会・環境・経済)」に拡大することも検討してください。とくに環境が経営の重要課題にならない企業は、社会的課題の解決に事業(保有する技術、製品、サービス)で取り組むことの可能性を示すことが重要でしょう。

箇条5 5.1 リーダーシップ及びコミットメント

 ISO9001では従来から経営者の責任という要求事項がありましたが、ISO14001では新たな要求事項です。品質は従来から経営マターになることが多いのですが、環境は経営的な優先順位が低くなりがちですので、経営に役立てるにはよりトップのリーダーシップが重要になります。事務局はいかに環境が事業貢献にもつながるかのストーリーを明確にして、経営層を巻き込む重要な位置づけになります。
 グローバル展開を行うある大手会社では、環境事務局が国内経営層のみならず海外関連会社のCEOを一同に集めての経営幹部セミナーを実施しました。その場に私も呼ばれて1時間ほど講演をさせていただきました。グループ各社のトップが世の中のサステナビリティの動向を共有化し、企業にどう役立てるかの共有認識を得ることの重要性をあらためて実感することができました。これは事務局がISOの要求事項をうまく使ってトップを巻き込んだ好事例の一つと思います。
 この企業はこの後、SBT(Science Based Target:2℃の気温上昇に抑えるための科学に整合した温暖化目標)の設定という非常にチャレンジングな目標設定を社長の強力なリーダーシップのもとに推進しています。
 ただ、環境がどうしてもマテリアリティ(重要課題)にならない企業であれば、いくらトップを巻き込もうとしても困難です。その場合には上述のようにSDGsなど社会活動全般をISO14001の対象とすることで、事業と社会課題解決の一体化を提案し、トップに関心を持ってもらうことが第一歩ですね。

箇条6 6.1.2 環境側面

 従来規格も2015年版の規格も組織の環境側面を特定し、「著しい環境側面」を決定することを要求しています。そして従来規格では特定した「著しい環境側面」を考慮して、EMSの各プロセスや環境目標など取組み項目を決めることが求められていました。つまり「著しい環境側面」がとても重要な主役だったんですね。
 しかし2015年版では「リスク及び機会」に基づきEMSの各プロセスや環境目標などを設定する流れになります。「著しい環境側面」は組織が抱える課題とともに、「リスク及び機会」を決定するための一つの情報源になってしまったわけです。「リスク及び機会」が主役の座を奪ったんです。
 要するに「著しい環境側面」も「リスク及び機会」も、EMSの取り組むべきもっとも重要な事項のことを意味しているわけです。GRIの表現を使えば「マテリアリティ」ということになります(コラム第12回参照)。
 従来規格では「著しい環境側面」が主役のため、これをきっちり細かく分析して特定することや「有益な環境側面」などとして、本業におけるビジネスチャンスなどにつなげる環境側面を選定するなど、ある面拡大的に捉えて、事業に有益に使うことを志向していました。
 しかし前述のようにこの役割は「リスク及び機会」に取って代わり、組織の抱える課題から展開される流れで決定されるようになった2015年版において、従来と同じ環境影響評価の仕組みのままでいいでしょうか? 現状の環境影響評価のプロセスが役立っていない、重いと考えているISO事務局の方にとってはザックリと簡素化するチャンスです。課題⇒リスク及び機会への流れに組み込むことも可能でしょう。

次回に続きます。

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コンサルタントプロフィール

山田 朗

品質革新センター チーフ・コンサルタント

山田 朗

1991年 JMAC入社。生産、開発部門のコンサルティングを経て、15年ほど前から環境分野を中心としたコンサルティングに従事。主要テーマは、環境 経営戦略立案、環境マネジメントシステム(ISO14001)の高度化、LCAを活用した環境負荷の定量化と削減、省エネルギー推進(エネルギー生産 性)、資源生産性向上支援など。環境を入り口として、開発、購買、生産、物流、マーケティングなどのさまざまな機能の生産性向上につなげる支援を志向して いる。


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