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第1回 設備管理における課題

結果系の悩みを要因系の側面からコンサルティング

 ずっと設備の改善や保全、そして新設備信頼性開発など、いわゆる設備管理と呼ばれる領域を中心にコンサルティングを行ってきた。お客さまから相談が持ち込まれるきっかけは、「故障が多いから何とかしたい」「不良を減らしたい」など、設備にまつわる結果系の悩みがほとんどだ。

 そこでわれわれのチームは、設備トラブル(結果系)をもたらす要因系の弱点を明確にし、弱点を改善・維持し、トラブルを減らすコンサルティングを行うわけであるが、要因系には2つの側面がある。

 1つめは「システム」である。保全におけるシステムとは、簡略すると設備トラブルに至る部品レベルの劣化パターンを明らかにして寿命を予測し、効果的な取替え周期を決めることをいう。

 部品寿命の予測がたたないときは、寿命兆候を見つけるために点検作業を頻繁に行うことになる。この場合、点検作業も基準書に基づいて実施されるため、保全システムの一部となる。

 2つめは「人」である。信頼できる保全システムを有しても、その運用に信頼がなければ成果は期待できない。保全システムを確実に実行するために、人づくりが必要となる。

 そこでわれわれのコンサルティングは、「信頼できる保全システム」×「人づくり」となる。これを「設備管理における課題」としておこう。

「信頼できる保全システムの構築」と「人づくり」に求められる"深さ"

 「保全システムの構築」という概念は、「情報システムを駆使し、保全カレンダーを出力し、協力会社に発注する仕事の計画や予備品・予備機の手配計画などを行う」という保全計画システムとして理解されがちである。しかし、"信頼できる"となると、情報システムの背後にある根拠に"深さ"が求められる。

 この深さのためには、技術が必要となる。たとえば、次の2つのようなケースをイメージするとわかりやすいだろう。

1)保全作業を規定する際、部品レベルで保全した方がよいか、組立部品レベルで保全した方がよいのかの検討からスタートする。われわれの言葉で「保全単位を決定する」というが、この検討の根拠には、(経済性も判断材料になるが)機械や電気に関する技術に基づき、設備性能を保証するための視点で決定される。

2)点検も保全システムの一部であると先に述べた。点検の結果、部品状態の良し悪しを判断するためにも、技術が必要となる。

 「人づくり」については多方面からさまざまな意見があろうが、われわれの経験から端的に「保全作業品質を支える技能」と言ってよく、それには技能の深さが必要となる。

 つまり、課題解決のために、「技術」と「技能」の2つの深さを追求していくことになる。

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基本原理の応用で発展してきた現代のTPM

 設備管理領域における代表的な活動として、TPM(Total Productive Maintenance)がある。現代のTPMは、設備管理にとどまらず、治工具管理や品質管理、作業管理、原価管理など、さまざまな管理対象に適用されている。(筆者は明るくないが)管理間接部門での適用事例も多い。

 「信頼できるシステムの構築」と「人づくり」という基本原理を、さまざまな管理対象に適用できないか?―と応用研究されるのも自然の流れであって、現代のTPMは多くの企業での応用研究と成果事例とともに発展してきた。

 次回以降、"深さ"の追求について実例をあげながら、触れていく。

 ※TPMは公益社団法人日本プラントメンテナンス協会の登録商標です。

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