お問い合わせ

【最終回】第9回 3PL新潮流 〜3PL成功のためのポイント〜

 前回は、荷主・3PL事業者のニーズのありようと求められる要件に関して確認した。それではそれらの要件を満たせば3PLは上手くいくのだろうか。最終回となる今回は、3PLの典型的な失敗パターンを確認し、真に3PLを成功させるために荷主と3PL事業者はどうするべきかを考えてみたい。

3PLの典型的失敗パターン

 それでは、3PL導入のプロセスに沿って、荷主サイドと3PL事業者サイドの両方から、失敗のパターンを抽出してみよう。

①意志決定時

 荷主サイドは、3PLと言えば何でも対応してくれるという過剰な期待を抱きがちだ。また、社内関連部門とのコンセンサスのない安易なコンペを企画し、自社の実態把握が不十分な状態で見積もり想定を行っている。

 3PL事業者は何とか受注したいので、受託するために実力以上の提案をするといった営業トークに走りがちになる。

②導入・移行期

 双方共に、納品先の特性/販売特性/製造(調達)特性/商品特性/物流特性などを十分に説明、理解しないままに業務設計を行い、それに基づいた甘い移行計画で進める。

 荷主サイドでは、自ら管理・改善することを放棄して業者に丸投げし、クレームに対しては一方的に改善を要求するのみ。さらに安定稼動しないことに対する不安、トップからのプレッシャーもあり、3PL事業者に対して性急な成果を求める。

 3PL事業者は、クレーム後の処理や定型化・標準化されていない業務に追われ、業務改善に手が付かない。支店、協力会社からの不満、トップからのプレッシャーもあり、モチベーションが維持できない。

③稼働後

 荷主サイドでは、方針の不徹底に対する各部門からの不満が大きくなり、コスト目標の未達だけが大きくクローズアップされ、責任を3PL事業者に転嫁しようとする。

 3PL業者サイドでは、想定条件と異なることを理由に値上げ要求を行うが、荷主からは顧みられない。さらに荷主の協力が得られない中で、現場は疲弊していく。

 以上のような失敗を繰り返すことにより、結果として相互に不信感を募らせて、疲弊していくケースが多く発生しているのが実態ではないだろうか。

 それでは、このような失敗に陥らずに3PLを成功させるための要件を考えてみる。

3PL成功のためのポイント

①意思決定時

 荷主サイドでは、3PLへの期待やアウトプットレベルを明確化する。RFPを初めとした基本設計を徹底して事前に行うことにより、相互に検討するベースラインをつくる。

 3PL事業者サイドでは、営業と現場が徹底して連携をとり「できないことは言わない」ようにする。価格・損益上の落としどころをできるだけ明確化にして荷主にも明示する。

②導入・移行期

 双方が一体となり、商品・市場・顧客特性を共有化し、最適なサプライチェーン構築へ向けて協業していくことを前提条件として検討を進める。ただし、あくまで荷主主導で行うことが重要である。

 荷主サイドでは、プロセス設計に積極的に関わる責任範囲を明確化し、安定稼動に向けてのリスク管理条件の明確化と対応体制を構築すること。

 3PL事業者サイドでは、委託されたことは確実にこなすのは当然として、さらに一歩進んだ提案を行うことにより、荷主の期待を良い意味で超えるように務める。同時に「修羅場をくぐった」ノウハウを提供することにより、地に足のついた改革を荷主に求めることも重要となる。つまり責任を明確化して(言うべきところは言う)、相互が納得したうえで推進していくのである。

③稼働後

 荷主サイドでは、改善提案の実行に向けて最大限の協力を惜しまないこと。

 3PL事業者サイドでは、自らの受託領域およびその周辺へ積極的な改善提案を継続して行いながら、荷主のサプライチェーン全体への支援を進めていく。

 これらのポイントを押さえながら3PLを進めていけば、信頼感を醸成してパートナーシップを深めていくことが可能になるだろう。

これから何を目指していくのかを再度考えるべき

 3PLが「コモディティ化」し、目指すもの・求められるものが、よくわからなくなっているように思われる。もう一度原点に返り「何のために外部委託(受託)するのか」「何を(どこを)目指していくのか」を再度考えるべき時期に差し掛かっているのではないだろうか。



 以上をもちまして、私のコラムの最終回とさせていただきます。ご愛読いただきました皆様にお礼申し上げます。

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第30回 心理的安全性は待つものではなく、自ら獲得するもの

イノベーション人材開発のススメ

  • 第6回 イノベーション人材が育つ組織的条件とは
  • TCFDに基づく情報開示推進のポイント
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット
  • 一人一人の「能率」を最大化させる、振り返りのマネジメント「YWT」のすすめ
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 【業務マニュアル作成の手引き・後編】マニュアルが活用されるための環境づくり
  • 品質保証の「本質」を考える ~顧客がもつ、企業に対しての「当たり前」~

オピニオン一覧

コラムトップ