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第8回 3PL新潮流 〜3PLの実態と課題〜 (その2)

 前回述べたように、日本における3PLは大きな「飽和点」「曲がり角」に来ていると考えているが、改めて荷主・3PL事業者のニーズの実情と求められる要件に関して確認していく。

市場動向はどう変わってきたのか

 物流を取り巻く市場動向は、この5年ほどで大きな変化を遂げている。いくつかのセグメントで考察すると、以下のように見て取ることができる。

●事業スタイル

 ノンアセット型3PLが主体で伸張傾向にある。輸配送は傭車中心で、倉庫はREITやBTS物件を賃借して事業を展開している。荷役はパート・アルバイトを活用する傾向は変わっていない。

●事業規模の拡大

 M&Aを活発に展開している。東日本は拠点投資意欲が比較的活発になっている。西日本にも拠点設立・強化の機運がある。

●コスト・相場

 ドライバー不足が慢性化・深刻化している。運賃上昇の局面が今後も継続する。都心の倉庫賃料の相場は上昇傾向にあり、パート・アルバイトの平均賃金も上昇傾向にある。

●その他

 納品サービスとしては、短納期化・納期指定の物流は"相変わらず"である。通販物流などの伸張により、小口貨物のボリュームがますます増える。物流子会社のありようが見直されつつある。

どのような課題およびリスクが想定されるか

 上記のような市場動向を踏まえると、現在あるいは近い将来の課題およびリスクを以下のように推定・想定している。

●事業スタイル

 輸配送はドライバー不足が深刻で、傭車中心の企業は車輌手配がままならなくなっている。自社物件を持たないことにより、顧客対応や提案に制約が生じているのではないか。

●事業規模の拡大

 M&A主体の事業規模の拡大は、本当に必要なことか(見かけだけの規模拡大)今一度見直す必要もある。規模の拡大に伴い「良質な管理者」の絶対数不足を招いていることが懸念される。

●コスト・相場

 荷主の最大関心事は相変わらずコストダウンであり、コストさえ安ければ良いという悪循環に陥っていないだろうか。コスト上昇局面を、荷主・3PLの協業によって乗り切ることは可能か?

●その他

 ロジスティクスを最適化するための取引条件や要求条件を交渉できていないのではないか?

 大型貨物(バラ積み卸し)と小口貨物市場は飽和状態であり、輸送力不足が顕在化している。

3PL事業者に求められる要件とは

 上記の市場動向と課題の認識に基づくと、3PL事業者に求められる要件は以下の3つになると考えている。

①現場オペレーション・作業能力

・要求される業務のQCD水準を満たすことを確実に行える能力
・現場リーダーの育成・外部協力会社の適切な使用・業務の標準化・ネットワーク企業の確保などの能力

②情報システムの導入・構築能力

・委託業務を遂行するために必要な情報システムを構築する能力
・WMSを保有していると言うことだけではなく、受発注や作業指示にかかわる業務プロセス設計や改善・帳票設計・ITインフラの管理能力

③改善提案・コンサルティング能力

・荷主の業務課題を把握したうえで、荷主にとって最適な物流の仕組みを提案できる能力
・単なる物流現場の最適化だけではなく、ロジスティクス・サプライチェーン全体を見据えた提案が出来る能力

 それでは、3PL事業者が上記要件を満たせば3PLはうまく進むと言えるだろうか?

 次回は、3PL成功のためのポイントを探っていく。

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